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「良かれと思って耳栓渡したら秒で床に転がってた件!」ICUの睡眠ケアって本当に効果あるの?エビデンスと現場のリアル【2022年RCT・2026年レビュー解説】

ICUの睡眠ケアって本当に効果あるの? 施設の手順を最優先・無理強いは避ける・周囲の環境を整える 看護技術・看護関連
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「良かれと思って耳栓とアイマスク渡したのに、次のラウンドで見たら秒で床に転がってて草も生えないんだが…!」

消灯時間に合わせて「少しでもぐっすり眠ってもらおう!」って気合入れて耳栓とアイマスクをセットしたのに、1時間後の巡回で「前が見えなくて怖いわ」「耳の穴が痛い!」と怒られ、ベッド柵の隙間に虚しく挟まっているあの光景、急性期やICUの夜勤あるあるですよね。

病棟の睡眠ケアマニュアルに「非薬理的ケアとして耳栓やアイマスクの活用を検討」なんて書いてあるから配ってみたものの、患者さんには鬱陶しがられるし、そもそもどれくらい効果があるのか聞かれても言い方に困る……。

「これ、無理につけてもらうくらいなら外したまま静かに寝かせた方が良くね?」って、ナースステーションで先輩に相談できずモヤモヤした経験、集中治療や急性期病棟にいるナースなら誰もが一度は通る道だと思います。

だけど実際のところ、ICUで耳栓やアイマスクをつけるのって、患者さんの睡眠やせん妄予防にどれくらい意味があると思います?

これって🦐えび🦐あるの?冠疾患集中治療室での臨床試験や国際ガイドライン、システマティックレビューを見ていきましょう!

ICUで耳栓やアイマスクを使うと患者の睡眠改善やせん妄予防にどれくらい効果があるのか?

簡単なまとめ: 成人CCU患者84人を対象にしたAkpinarらのRCT(2022年)では、夜間の耳栓・アイマスク使用により主観的睡眠スコア(RCSQ)が平均40点から72点へと大幅に改善し、せん妄評価スコア(ICDSC)も有意に低下した。2018年のPADISガイドラインでも非薬理的睡眠プロトコルの一環として騒音低減や耳栓などの活用が条件付きで提案されている。ただし2026年のシステマティックレビュー(RCT 8件・計611人)ではせん妄予防効果にばらつきがあり、患者が装着を嫌がって外してしまう耐容性の低さも大きな課題であるため、無理強いせず自施設のケア手順と安全確認を最優先することが求められる。

出典: Akpinarら 2022、Devlinら 2018、Ciborro-Montesら 2026

耳栓とアイマスクで睡眠スコアが40点から72点まで上がった?

まずは、耳栓とアイマスクを夜間に装着してもらった2022年の研究をチェックしてみます。

トルコの冠疾患集中治療室(CCU)で行われたこのランダム化比較試験(RCT)では、成人患者84人を「夜間に耳栓とアイマスクをつけるグループ42人」と「通常のケアを受けるグループ42人」に分けて比較しました (1)。

睡眠の評価には、集中治療室でよく使われるリチャーズ・キャンベル睡眠質問票(RCSQ:0〜100点、点数が高いほどよく眠れたと感じる指標)を使っています。

その結果、耳栓とアイマスクをつけたグループの睡眠スコアは次のように変化していました (1)。

装着グループの睡眠スコア(RCSQ):初日ベースライン 40.11点 → 1日目 64.09点 → 2日目 72.07点 (p < 0.001)
通常ケアグループの睡眠スコア(RCSQ):初日ベースライン 44.07点 → 1日目 46.97点 → 2日目 47.04点

夜間の耳栓・アイマスク装着による睡眠スコア(RCSQ)の推移

グループ 初日ベースライン 1日目 2日目
装着グループ(42人) 40.11点 64.09点 72.07点
通常ケアグループ(42人) 44.07点 46.97点 47.04点

本文記載のAkpinarらの研究 (1)によるRCSQスコアの推移を整理したものです。

40点から72点って、ほぼ倍近く睡眠の満足度が上がっていますよね。

通常ケアのグループが47点前後でほとんど変わっていないのと比べると、統計的にもはっきり差が出ています。

数字だけ見ると「えっ、耳栓とアイマスクってそんなに効くの!? 今すぐ病棟のカートに山積みにして配りたいんだけど!」ってテンションが上がりますよね。

だけど、、、現場感覚からすると「これって夜通しちゃんとつけ続けられた人たちのデータだからこその跳ね上がりなんじゃね?」という視点も忘れてはいけません。

現場で実際に配ってみると、ウレタンの耳栓を指で細く潰して耳に入れる段階で、手のひらの中でみるみる膨らんで「入らない!痛い!」と弾かれたり、アイマスクのゴムが後頭部に食い込んで鬱陶しがられたり、装着するハードル自体が結構高いのがリアルですよね。

せん妄スコアも下がったって本当?でも全体で見るとどうなの?

この研究では睡眠の調査とあわせて、せん妄の評価も同時に行っています (1)。

集中治療せん妄スクリーニングチェックリスト(ICDSC:0〜8点、4点以上でせん妄疑い)を使って点数を追跡したところ、2日目の夜に次のような結果が出ていました。

装着グループのせん妄スコア(ICDSC):初日ベースライン 0.47点 → 1日目 0.33点 → 2日目 0.19点 (p = 0.004)
通常ケアグループのせん妄スコア(ICDSC):初日ベースライン 0.42点 → 1日目 0.50点 → 2日目 0.57点

せん妄評価スコア(ICDSC)の推移

グループ 初日ベースライン 1日目 2日目
装着グループ 0.47点 0.33点 0.19点(p = 0.004)
通常ケアグループ 0.42点 0.50点 0.57点

本文記載のAkpinarらの研究 (1)によるICDSCスコアの推移を整理したものです。

確かにスコアは下がっています。

ふーむ、だけど、、、もともとベースラインが0.4点台だから、全員が暴れるような重いせん妄というより、夜間の不穏や軽い混乱が少し落ち着いていた、くらいの変化かぁ。

点数としては統計的に有意差が出ているけれど、劇的にせん妄患者がゼロになったという話とは少し違いますよね。

しかも、複数の研究をまとめた2026年のシステマティックレビュー(RCT 8件・計611人)を見てみると、耳栓やアイマスクで主観的な睡眠感は良くなる傾向があるものの、せん妄の発生率そのものを確実に減らせるかについては、研究によって結果がバラバラで決定的とは言えないと報告されています (3)。

2018年に発表された集中治療の国際指針(PADISガイドライン)でも、耳栓やアイマスク単体で全て解決するとは言っていません (2)。

夜間の部屋の照明を落としたり、不要なモニターアラームを適切に調節したり、深夜のケアを集約して入室回数を減らすといった「多要素の睡眠プロトコル」の一部として耳栓やアイマスクを組み合わせることが条件付きで提案されている位置づけなんですよね。

限界点も知っておこう

今回の研究やエビデンスを日頃の病棟に持ち帰る前に、いくつか知っておくべき限界があります。

まず1つ目は、研究の規模と対象が限られていること です (1)。

今回の研究はトルコの単一施設のCCUに入室した循環器疾患の患者さん84人が対象でした。

人工呼吸器につながれて鎮静がかかっている重症患者さんや、術後でドレーンがたくさん入っている患者さん、すでに強い不穏が出ている患者さん全員にそのまま当てはまるわけではありません。

2つ目は、睡眠の評価が質問票による主観的なもの中心であること です。

脳波測定のような客観的な睡眠ポリグラフで深いノンレム睡眠が何分増えたかまで厳密に測定したわけではないため、患者さんの「静かに感じた」「いつもより眠れた気がした」という心理的な満足感が点数に反映されやすい側面があります。

そして最大の限界は、患者さんの受け入れ(耐容性)の難しさ です (3)。

2026年のシステマティックレビューでも指摘されている通り、耳栓やアイマスクは途中で違和感を覚えて自分で外してしまったり、そもそもつけること自体を強く拒否する患者さんが一定数存在します。

嫌がっている人に無理につけさせても効果どころか強いストレスになってしまうため、エビデンスの数字をそのまま全員に当てはめるのは無理があるんですよね。

今後どうしていくべきなの?(手順・例外・判断基準)

では、現場の看護師はどう動いていくべきなのでしょうか。

判断の優先順位は、自施設の睡眠・せん妄ケア手順 > 一次エビデンス > 医師指示・方針 の順序で考えるのが鉄則です。

どれだけ論文で良い数字が出ていても、現場の安全手順や患者さんの意思を無視して突っ走るのは避けなければいけません。

① 嫌がられたら秒で引く!無理強いは絶対に避ける

病棟のケア手順書に「睡眠ケア:耳栓・アイマスクの活用」と書かれていたとしても、患者さんが「嫌だ」「耳が痛い」「前が見えないと不安」と言ったときは、絶対に無理強いしてはいけません。

視覚を奪われる恐怖や耳の圧迫感は、閉鎖空間にいる患者さんにとって強い拘束感となり、かえって不穏やせん妄を悪化させる引き金になります。

嫌がられたら笑顔で「分かりました!無理につけなくて大丈夫ですからね〜」と秒で引くのが正解です。

その代わり、部屋の間接照明を落としたり、不要なモニターの警告音を適切に調整したり、ドアの開閉音を静かにするなど、周囲の環境調整に切り替えましょう。

耳栓を嫌がられた若手にねこナースが無理強いせず環境を整えようと伝える4コマ
無理強いせず、施設の手順を優先する。

② おすすめするときの声かけ:「効果の押し売り」ではなく「いつでも外せる安心感」

患者さんに提案するときに、「これをつけると睡眠が深くなってせん妄予防になりますよ」なんて医学用語をぶつけても、患者さんからすれば「え、私ボケるの…?」と警戒されてしまいますよね。

効果の押し売りと選択肢としての提示の違い
効果の押し売りは無理強いで拘束感を招く。選択肢として提示し、嫌なら外して環境を調整する。患者の安全と手順が最優先。

声かけのコツは、いつでも自分の意思でやめられる選択肢 として差し出すことです。

❌ 避けたい声かけ:
「夜間の睡眠改善とせん妄予防のエビデンスがあるので、朝まで外さずにつけていてくださいね」

⭕ おすすめの声かけ:
「ICUって夜中でも機械のピピピ音が鳴ったりスタッフが歩いたりして、どうしても目が覚めやすいんですよね。もし音が気になったら使ってみますか? 途中で鬱陶しくなったり耳が痛くなったら、いつでもポイッと外して枕元に置いちゃって全然大丈夫ですからね〜」

「嫌なら外していい」という逃げ道を作ってあげるだけで、患者さんの心理的ハードルはグッと下がります。

睡眠ケアの提案から中止・環境調整までの流れ
いつでも外せる形で提案し、嫌がられたら中止して周囲の環境を調整する。無理強いせず手順を守る。

③ 安全管理と禁忌の見極め

耳栓とアイマスクは手軽なケアに見えますが、患者さんの状態によっては危険を招くことがあります。

次のケースでは、使用を慎重に判断するか、最初から避ける必要があります。

  • 誤飲のリスクがある場合:認知機能が低下している患者さんや、不穏傾向のある患者さんがウレタン耳栓を口に入れてしまう危険があるときは使用を避けます。
  • 耳や目の局所トラブル:外耳炎、耳の手術後、頭部外傷、眼科手術後、角膜保護が必要な状態などでは使用できません。
  • 見当識の低下や転落リスク:アイマスクで完全に視界を遮られることで、自分がどこにいるか分からなくなり、点滴やチューブの自己抜去、ベッドからの転落リスクが高まることがあります。

装着した場合でも、ナースコールが確実に手の届く場所にあるか、ナースコールの呼び出し音が患者さんに聞こえるかを必ず確認してください。

④ 施設手順とチームでの記録・共有

患者さんが耳栓やアイマスクを試したけれど嫌がって外した場合は、それ自体が立派なアセスメント結果です。

「睡眠ケア手順に沿って耳栓を提案するも、耳の圧迫感を訴え本人の希望により中止。消灯とアラーム音量の調整を実施」などと看護記録に残しておけば、次のシフトの看護師も無理に勧めずに済みますよね。

施設の手順を守りつつ、患者さんの個別性に合わせてチームで方針を共有していきましょう。

✔まとめ

  • 成人CCU患者84人のRCTでは、夜間の耳栓・アイマスクで主観的睡眠スコアが40点から72点へと大幅に改善し、せん妄スコアも低下した
  • 国際ガイドライン(PADIS 2018)でも非薬理的プロトコルとして提案されているが、2026年のシステマティックレビューではせん妄予防効果にばらつきがある
  • 最も大切なのは 自施設の睡眠・せん妄ケア手順と安全確認 であり、嫌がる患者さんに無理強いするのは絶対にNG
  • おすすめするときは効果を押し売りせず、「いつでも外していい」逃げ道を作って提案する

個人的には、耳栓やアイマスクは全員に配る義務と思い込まず、環境音で困っている患者さんにそっと差し出す選択肢の1つくらいに構えるのが現場では一番ちょうどいいと感じています。

無理につけさせてベッド柵に挟まる耳栓を拾い集めるくらいなら、深夜のナースステーションの話し声を少しトーンダウンする方が、よっぽど患者さんの安眠を守れますからね。

よくある質問

Q: ICUで耳栓やアイマスクを使うと患者の睡眠改善やせん妄予防にどれくらい効果があるのか?

A. 成人CCU患者84人を対象にしたAkpinarらのRCT(2022年)では、夜間の耳栓・アイマスク使用により主観的睡眠スコア(RCSQ)が平均40点から72点へと大幅に改善し、せん妄評価スコア(ICDSC)も有意に低下した。2018年のPADISガイドラインでも非薬理的睡眠プロトコルの一環として騒音低減や耳栓などの活用が条件付きで提案されている。ただし2026年のシステマティックレビュー(RCT 8件・計611人)ではせん妄予防効果にばらつきがあり、患者が装着を嫌がって外してしまう耐容性の低さも大きな課題であるため、無理強いせず自施設のケア手順と安全確認を最優先することが求められる。

Q: 患者さんが「耳が痛い」「前が見えなくて怖い」と嫌がった場合はどうすればいいですか?

A. 無理強いは絶対にせず、直ちに外してください。視覚の遮断や耳の圧迫感は患者さんに強いストレスや拘束感を与え、かえってせん妄や不穏を誘発する恐れがあります。嫌がられた場合は直ちに中止し、部屋の間接照明の調整や不要なモニターアラームの音量低減、ケアの集約など、他の環境調整に切り替えるのが鉄則です。

Q: 睡眠ケア手順に耳栓・アイマスクの記載がある場合、医師の指示やエビデンスとどう擦り合わせるべきですか?

A. まず自施設の看護手順と患者さんの安全が最優先です。手順に記載があっても患者さんの個別性(拒否、誤飲リスク、局所疾患など)をアセスメントし、装着が適さない場合は中止してその理由を記録に残します。睡眠薬や鎮静薬の指示が出ている場合でも、非薬理的ケアの適応について医師や夜勤チームと状況を共有しながら対応を決めていきましょう。

夜勤を終えて帰宅したあと、日中の外光が部屋に入り込んで落ち着かないことがあります。モノンズの立体アイマスクのように、目元に直接触れにくい立体構造のアイマスクを自宅での休息に使う方法もあります。

立体的な形で、自宅の休息に使えます。病棟での勤務や患者への対応においては、施設手順や医師指示、患者安全が最優先されます。

目元への圧迫感を抑えたいときに手元へ置いておく私物として扱いやすい形状です。日頃の休息環境を静かに整えておく道具として役立ちます。

夜勤明けの昼に自宅でモノンズのアイマスクを紹介する4コマ
立体的な形で、自宅の休息に使えます。

参考文献

(1) Akpinar, R. B., Aksoy, M., & Kant, E. (2022). Effect of earplug/eye mask on sleep and delirium in intensive care patients. Nursing in Critical Care, 27(4), 537–545. https://doi.org/10.1111/nicc.12741

(2) Devlin, J. W., Skrobik, Y., Gélinas, C., Needham, D. M., Slooter, A. J. C., Pandharipande, P. P., Watson, P. L., Weinhouse, G. L., Nunnally, M. E., Rochwerg, B., Balas, M. C., van den Boogaard, M., Bosma, K. J., Brummel, N. E., Heras La Calle, G., Chanques, G., Dendukuri, N., Dorsey, K. G., Duprey, M. S., … Alhazzani, W. (2018). Clinical practice guidelines for the prevention and management of pain, agitation/sedation, delirium, immobility, and sleep disruption in adult patients in the ICU. Critical Care Medicine, 46(9), e825–e873. https://doi.org/10.1097/CCM.0000000000003299

(3) Ciborro-Montes, D., & Fernández-Garrido, J. (2026). Use of earplugs and eye masks in intensive care units to improve sleep quality and prevent delirium: A systematic review. Enfermería Intensiva (English Edition), 37(3), 500607. https://doi.org/10.1016/j.enfie.2026.500607


※本記事は看護ケアにおける一般的なエビデンスを解説したものであり、個々の患者の診断や治療方針、施設ごとの医療安全手順を代替するものではありません。実際の臨床現場では、自施設の看護手順、医師の指示、患者さんの個別性を最優先して対応してください。

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