ショック時の下肢挙上や心肺停止時(CPA)の下肢挙上のエビデンス【看護技術のエビデンス】

下肢挙上の効果 看護技術のエビデンス ショック 心肺停止時看護技術・看護関連
下肢挙上の効果 看護技術のエビデンス ショック 心肺停止時
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こんにちはシロです。縁があって、このブログのカテゴリで執筆させてもらっています。
よろしくです。

今回は下肢挙上について述べたいと思います

ショック時の下肢挙上はすべきか否か?

今でもショックの患者さんに下肢挙上する現場をちょくちょく目にします。ショック時にすぐできる処置ですからね。このエビデンスについて解説します。

結構ググっても色々言われていてそこらへんを整理します。

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下肢挙上の効果は一時的

下肢挙上は英語で Passive leg raisingと言います。

寝ている患者の足を上げるだけで急速輸液と同じような効果が期待できるとされるため、臨床では好んで使われますよね。

1982年の有名な論文で下肢挙上の効果は7分間だけという報告があります。
25歳から35歳の健康なボランティア10名を対象に、仰臥位で60度の受動的下肢挙上を20秒と7分間行った後、心拍数、血圧、心拍出量を測定した。
仰臥位で3分間休息した後に脚を上げると、一回拍出量と心拍出量は一時的に増加した(8~10%)。脚を上げて7分後には、これらの有益な効果は消失した。(1)

これは蘇生ガイドラインあたりにも採用されていますよね!

また、2012のメタ研究では21件の研究を対象とし431名が対象となりました。平均動脈圧は20件中9件で上昇し、中心静脈圧とPAPは計測したすべての研究で上昇した(n=8)。心拍出量は2~10分後にも持続し、6%(0.17L/min)程度増加していた。(2)

以上より下肢挙上は確かに心拍出量を上げると考えられます。

現場で多用されることが分かりますよね!

しかし、下肢挙上に慎重になるべきという研究も存在します。

閉塞性ショックや心不全患者(心原性ショック)では下肢挙上は有害かも?

右室駆出率(RVEF)が低下している患者(n=6)に右心室の状態が悪化したと報告されました(3)

つまり、右心不全患者やそれに近い病態、肺塞栓血栓症や心タンポナーデなどの病態では下肢挙上は有害である可能性があります。
サンプル数が少し少ないことがリミテーションですが、確かにうっ血性心不全患者に急速輸液はよろしくないですよね。

この研究を通して言いたいことはショック患者に何でもかんでも下肢挙上は危ないよね!という事です。

閉塞性ショックや心不全患者での(心原性)ショックには下肢挙上は考慮する必要があります。
(まぁ臨床的に問題になるかは微妙やけど)

というわけで、ショックの原因が閉塞性ショックか分からない場合は下肢挙上はちょっと考えましょうね!

看護師にとって重要な臨床推論をフルに働かそう!!ヒントは頚静脈怒張を確認するんじゃ!

ショック時に行う下肢挙上のまとめ

✔ショック時の下肢挙上の効果は7分から10分くらいはありそう。

✔閉塞性ショックや心不全患者では心不全を助長する可能性もあるため下肢挙上は考慮する必要がある

個人的にはショックの原因が分かっている下肢挙上は一時しのぎには、やっても良いのかなと思います!
でもルートが取れているなら輸液投与を優先しますね!

みんな好きな下肢挙上!心停止患者にも使えるかも

ここ最近のトリビアでは心肺停止時のCPRでも下肢挙上が効果あるんじゃね?という論争が勃発していました!

下肢挙上+CPRは効果あり?

CPR+下肢挙上はEtCO2が上昇、予後が良い傾向かも

2010年の研究では心肺停止患者に下肢挙上するとetCO2が上昇した。また退院までの生存率は,PLRのある患者では7%,PLRのない患者では1%であった。(4)

下肢挙上するとEtCO2が上昇する、有意差はないけど予後良さそうじゃね?っていう研究でした。

※ETCO2とROSCとの関係や予後、重要性についてはこちらのブログが参考になります(Hospitalist ~なんでも無い科医の勉強ノート~URL

CPR+下肢挙上は神経学的予後を良くする!かも

2012年の研究では効果ありました!

豚に!

健康な子豚20頭に心室細動を誘発し,その後8分間放置しました!

豚になんてことすんねん!でも科学の発展(人間の利益)ためには致し方ありません。
事後おいしくいただいたのでしょう。鎮静薬とかオピオイド使いまくってるらしいけど。

心肺蘇生中の受動的脚上げは,最初のショックを受ける前の1分間に冠動脈灌流圧を有意に増加させた。自己心拍再開と24時間生存率は同等であったが、下肢挙上の方が神経学的スコアが有意に高かった。(5)

どうでもいいけど、豚に下肢挙上ってどうするんだろうか、、、。

たぶんこうした?下図参照

無理が無いか、、、?詳しくは論文をチェックしてね!

人形でもイケる!

2017年にはたぶん人形のモデルを使って下肢挙上+心肺蘇生法(CPR)を行い通常のCPRとの効果を比較した研究がありました!(6)みんな下肢挙上大好きなんだよな!
45°度下肢挙上すると心拍出量(CO),全身灌流圧(SPP),冠動脈灌流圧(CPP)を約40~65%有意に改善した。(6)

同じく2017年の研究でシュミレーションでCPPもだけれど脳血流を改善するとか!悪くないね!(7)

wow!これからCPRに下肢挙上のオプションが付くかもね?!

ヒトで試してみた

さまざまな人以外の実験を通して、2019年にヨシ!試してみるぞ!と研究が出されました。

3554人の心肺停止患者に下肢挙上をする場合としない場合の予後を観察しました。

傾向スコアマッチングとか色々してみたけれど、、、

結果は30日までの生存率を向上させない。(8)
下肢挙上してもしなくても変わらないという結果でした!これがリアルワールドの怖さだよね!

観察研究だけじゃエビデンス高くないよね!エビデンスレベルについてはこちらが分かりやすいです。(エビデンスレベルとはなに?わかりやすくまとめてみた URL

RCTでCPR+下肢挙上の効果は終止符が打たれたか!?

2021年に出ました!ランダム化比較試験です!

588例の院外心肺停止患者を無作為に対象にしました。神経学的所見を含め下肢挙上をしても差はなし!(9)

残念!

心停止からPLRまでの時間が記録されていないため潜在的な交絡因子となる可能性があるとは書いていますが、これといった害は無いようだけれど効果もないといった所。

また、今後追試で変わるかもしれませんけどね!いまのところは心停止における下肢挙上は意味ないかも!です。

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参考文献

(1)Gaffney, F. A., Bastian, B. C., Thal, E. R., Atkins, J. M., & Blomqvist, C. G. (1982). Passive leg raising does not produce a significant or sustained autotransfusion effect. The Journal of trauma22(3), 190–193.

(2)Geerts, B. F., van den Bergh, L., Stijnen, T., Aarts, L. P., & Jansen, J. R. (2012). Comprehensive review: is it better to use the Trendelenburg position or passive leg raising for the initial treatment of hypovolemia?. Journal of clinical anesthesia24(8), 668–674.

(3)Bertolissi, M., Da Broi, U., Soldano, F., & Bassi, F. (2003). Influence of passive leg elevation on the right ventricular function in anaesthetized coronary patients. Critical care (London, England)7(2), 164–170.

(4)Axelsson, C., Holmberg, S., Karlsson, T., Axelsson, A. B., & Herlitz, J. (2010). Passive leg raising during cardiopulmonary resuscitation in out-of-hospital cardiac arrest–does it improve circulation and outcome?. Resuscitation81(12), 1615–1620.

(5)Dragoumanos, V., Iacovidou, N., Chalkias, A., Lelovas, P., Koutsovasilis, A., Papalois, A., & Xanthos, T. (2012). Passive leg raising during cardiopulmonary resuscitation results in improved neurological outcome in a swine model of prolonged ventricular fibrillation. The American journal of emergency medicine30(9), 1935–1942.

(6)Shin, D. A., Park, J., Lee, J. C., Shin, S. D., & Kim, H. C. (2017). Computational simulation of passive leg-raising effects on hemodynamics during cardiopulmonary resuscitation. Computer methods and programs in biomedicine140, 195–200.

(7)Zhang, Y., Jiménez-Herrera, M., Axelsson, C., & Cheng, Y. (2017). Not Bad: Passive Leg Raising in Cardiopulmonary Resuscitation-A New Modeling Study. Frontiers in physiology7, 665.

(8)Holmén, J., Herlitz, J., Jimenez-Herrera, M., Karlsson, T., & Axelsson, C. (2019). Passive leg raising in out-of-hospital cardiac arrest. Resuscitation137, 94–101.

(9)Azeli, Y., Bardají, A., Barbería, E., Lopez-Madrid, V., Bladé-Creixenti, J., Fernández-Sender, L., Bonet, G., Rica, E., Álvarez, S., Fernández, A., Axelsson, C., & Jiménez-Herrera, M. F. (2021). Clinical outcomes and safety of passive leg raising in out-of-hospital cardiac arrest: a randomized controlled trial. Critical care (London, England)25(1), 176.

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