なぜ乳がん術後患者の患側側の血圧測定は禁忌?【看護技術のエビデンス】

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乳がん術後患者の患側側の血圧測定は禁忌?

今回は乳がん患者の禁忌について触れたいと思います。

看護師になった時あるいは看護学生の時に一度は先輩看護師や教員に注意をされたのではないでしょうか?

「乳がん術後の患者さんの患側で血圧測定はダメだよ!」

これには理由があってリンパ節郭清している場合

腋窩リンパ節の郭清範囲が広いほど、乳がん術後におけるリンパ浮腫の発症リスクは高くなります。また、いずれの郭清レベルの場合においても、リンパ節を郭清した際には、同時に周囲のリンパ管も切断されてしまいます。よって、リンパ節郭清後はリンパ管の輸送機能が障害されてリンパ液の流れが停滞し、タンパク成分を多く含む組織間液が皮下組織に過剰に溜まり、むくみが生じやすくなります。さらに、毛細リンパ管は表皮の直下にあるため、外部からの影響を受けやすいです。そのため、血圧測定時のマンシェットによる患側の圧迫は、毛細リンパ管を壊してしまう恐れがあります 引用サイトURL

血圧測定は毛細リンパ管を破壊する可能性があるようです。だから浮腫を悪化させるのかもしれません。

これって🦐えび🦐あるか検証してみました。

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乳がん患者の患側の血圧測定はリンパ浮腫を悪化させる?

患側の血圧測定は浮腫を悪化させた!後ろ向き研究結果

2005年に176名乳がん術後で6ヶ月経過した方を対象にした研究では、血圧測定を患側でも行う人で腕周りの総和(SOAC)の左右差が5㎝以上患側で太い=浮腫を認めるという結果が出ています。オッズでいうと3.4倍 (CI:1.0~11.1)です。ちなみにリンパ節郭清している割合は87.5%でした。(1)

確かにこの研究の結果をみるとやっぱ患側は浮腫るんだなぁと思います。

だけど

この研究で腕周りの総和(SOAC)の左右差が5㎝以上だった方は176人中21名でした!うーむ全体の12%かぁ。

さらに血圧測定をどちらでやっていたかは自己申告

厳密に患側で統一する、健側で統一するという研究デザインではありませんでした。

そりゃ一回くらいした人も患側でしましたって言うかもしれんよね。また血圧測定を患側でされたという自己申告と腕の計測の研究なので微妙だなぁーという中身の研究です。

21名が術後6ヶ月の間に、たしか、、患側で血圧計測していました!

腕むくんでいるでしょう?といっても説得力がいまいちですね。後ろ向き研究の弱い所でもあります。

ちなみにこれ以降の研究はほとんどで血圧測定を患側でしても、リンパ浮腫が無いことが指摘されています。

これくらいしか乳がん術後の患者の患側で血圧を計測すると浮腫るというエビデンスは無いようです。

一説では昔の偉い人の意見がいまだに残っているんじゃないか?(2)という感じです。

前向き研究で乳がん術後の患側で血圧測定した患者の浮腫を確認した。

2013年の研究では乳がん術後の295人に1年間3ヵ月間隔で行った前向き研究では、患側の血圧測定は有意差がありませんでした。ちなみにリンパ節切除の数が多いほど浮腫が発生しやすいと有意差が見られました。(3)

前向き研究とは乳がん治療を受けた人にこれから一年間この項目について調べるからチェックしてねという感じなので、後ろ向き研究の思い出して!どうだった??っていう感じよりはエビデンスレベルは高そうですね。

この研究ではなぜかサウナがリンパ浮腫と有意差がありました!?詳しくは論文をチェックしてね!

2016年の5個未満のリンパ節を切除した女性241人と5個以上のリンパ節を切除した女性209人の乳がん術後の方を手術前、4週間以内、手術後6ヶ月、12ヶ月、18ヶ月に評価しました。対象者には前週に起こった出来事について毎週日記をつけてもらいました。
結果は血圧測定と浮腫は有意差なしでした。この研究でもやはりリンパ節を切除した方が浮腫になりやすい結果でした。(4)

2005年~2014年にかけてある病院で乳がん手術を受けた患者さんが患側の血圧測定をされた回数と浮腫の関係を解析した結果でも有意差はありませんんでした。これはリンパ節生検のみで郭清していない人が71%なので微妙かもしれません。(5)

だけど、

上記をまとめたレビュー論文でもやっぱ患側の血圧測定と浮腫は関連性はなさそうだよねって結論しています。だけど、患者さんが不安がる場合には配慮しましょうと書いています。(6)

結論 乳がん術後の患側で血圧測定は禁忌なのか?

管理人の結論ですが、乳がん術後の血圧測定はどっちの腕でも良いでしょう!

なぜってエビデンスでは患側の血圧測定と浮腫の関連は否定されています!(今のところ)

血圧測定くらいじゃ人の末梢組織はどうこうならんのだと思います!

だけど、昔から医師や看護師に患側の腕で血圧測定はダメ!って言われている患者さんもいるはずです。きちんと説明して問題が無いことを告げることも大事です。それでも不安な患者さんはいるはずです。

そういう場合は患側で測らない配慮も必要かと思います。
エビデンスが看護の全てではないのですから。

患者さんがケアの中心ですからね。ナラティブもとっても大事ですよ

また、すでに患側にリンパ浮腫がある場合は対処が違うと思いますので注意です。

おそらく測定しない方が良いと思われます。気が向いたら調べますね!

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参考文献

(1)Hayes, S., Cornish, B., & Newman, B. (2005). Comparison of methods to diagnose lymphoedema among breast cancer survivors: 6-month follow-up. Breast cancer research and treatment, 89(3), 221–226.

(2)McLaughlin, S. A., DeSnyder, S. M., Klimberg, S., Alatriste, M., Boccardo, F., Smith, M. L., Staley, A. C., Thiruchelvam, P., Hutchison, N. A., Mendez, J., MacNeill, F., Vicini, F., Rockson, S. G., & Feldman, S. M. (2017). Considerations for Clinicians in the Diagnosis, Prevention, and Treatment of Breast Cancer-Related Lymphedema, Recommendations from an Expert Panel: Part 2: Preventive and Therapeutic Options. Annals of surgical oncology24(10), 2827–2835.

(3)Showalter, S. L., Brown, J. C., Cheville, A. L., Fisher, C. S., Sataloff, D., & Schmitz, K. H. (2013). Lifestyle risk factors associated with arm swelling among women with breast cancer. Annals of surgical oncology20(3), 842–849. https://doi.org/10.1245/s10434-012-2631-9

(4)Kilbreath, S. L., Refshauge, K. M., Beith, J. M., Ward, L. C., Ung, O. A., Dylke, E. S., French, J. R., Yee, J., Koelmeyer, L., & Gaitatzis, K. (2016). Risk factors for lymphoedema in women with breast cancer: A large prospective cohort. Breast (Edinburgh, Scotland), 28, 29–36.

(5)Ferguson, C. M., Swaroop, M. N., Horick, N., Skolny, M. N., Miller, C. L., Jammallo, L. S., Brunelle, C., O’Toole, J. A., Salama, L., Specht, M. C., & Taghian, A. G. (2016). Impact of Ipsilateral Blood Draws, Injections, Blood Pressure Measurements, and Air Travel on the Risk of Lymphedema for Patients Treated for Breast Cancer. Journal of clinical oncology : official journal of the American Society of Clinical Oncology, 34(7), 691–698.

(6)Asdourian, M. S., Skolny, M. N., Brunelle, C., Seward, C. E., Salama, L., & Taghian, A. G. (2016). Precautions for breast cancer-related lymphoedema: risk from air travel, ipsilateral arm blood pressure measurements, skin puncture, extreme temperatures, and cellulitis. The Lancet. Oncology17(9), e392–e405.

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