「申し送りで『抜管したてで痰絡みそうだし、今すぐ胸部理学療法(胸部PT)入れた方がよくね?』って聞かれて、思わず『ちょ、待って!』って止めに入ったことない?」胸部理学療法は、体位ドレナージや呼吸介助など、痰を出やすくする狙いで行う手技やリハビリの総称です。
良かれと思って抜管直後にすぐ背中を叩いたりスクイージングしたくなる気持ち、マジでわかりみが深すぎる。日勤で受け持った直後とか、気管チューブを抜いたあとの患者さんがゴロゴロ鳴ってると「早く出してあげなきゃ!」って焦るよね。だけど集中治療室(ICU)のベッド周りってラインもドレーンも大量だし、血圧や呼吸だってまだ全然落ち着いてないから、本当に今すぐグイグイ触って平気なのか超迷いません?
「抜管直後に胸部理学療法を入れると肺が広がる」って噂、実際のところどこまで根拠があって、どこからが危ないラインなんだろう?
これって🦐えび🦐あるの?集中治療の介入研究と安全基準を見ていきましょう!

ICUで抜管直後の患者に即時胸部理学療法は効果があるの?
簡単なまとめ: 48時間挿管後に抜管された成人70名を対象とした2023年の無作為化比較試験では、早期離床や呼吸訓練、排痰法を組み合わせた即時胸部理学療法により、肺活量や酸素化の改善が報告された。ただしこの研究は呼吸不全患者を除外した小規模な検証であり、臨床現場では全員への一律実施は推奨されていない。実際のICU勤務では論文のエビデンスよりも各施設の安全手順や主治医の指示、患者個別の禁忌評価を優先して判断する必要がある。
出典: Reshiaら 2023、Spapenら 2017、米国呼吸ケア学会(AARC) 2013
抜管直後に胸部理学療法をやると肺機能はどう変わる?
「抜管直後に理学療法をやると呼吸の数値が良くなる」っていう話、実は2023年にエジプトのマンスーラ大学病院ICUから発表された研究(1)が元ネタになっています。
この試験では、ICUで48時間人工呼吸器につながれて無事に抜管を迎えた20〜60歳の患者さん70名(平均年齢は約38歳)を対象にしました。帽子からくじを引く形で2つのグループに分けて、一方の35名には特別な研修を受けた集中治療ナースと理学療法士がタッグを組んで、抜管直後から「即時胸部理学療法」を実施したんです。メニューは早期離床、呼吸筋トレーニング、胸部打診(丸めた手でリズミカルに叩く手技)、体位排液(体位ドレナージ)、呼気時の胸部振動など、排痰ケアをフルセットで行いました。
もう一方の35名は通常ケア群として、定期的な体位変換と、必要に応じた吸引だけを行いました。
マンスーラ大学病院ICUにおける即時胸部理学療法の無作為化比較試験(Reshiaら 2023、RCT、n=70)
| 項目 | 即時胸部理学療法群 | 通常ケア群 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 対象患者 | 人工呼吸器管理48時間後に抜管された成人(20〜60歳) | 人工呼吸器管理48時間後に抜管された成人(20〜60歳) | 平均年齢は約38歳 |
| 患者数 | 35名 | 35名 | 合計70名 |
| 実施者 | 集中治療室看護師(訓練受講)および理学療法士 | 担当スタッフ | — |
| 介入内容 | 早期離床、呼吸筋訓練、胸部軽打法、体位排痰法、呼気時の胸部振動法 | 定期的な体位変換、必要時の吸引 | 抜管直後から実施 |
本表は引用文献(Reshiaら 2023)に記載された研究デザインおよび対象の数値を整理したものです。
その結果、抜管後の呼吸機能テストでは理学療法を受けたグループの方が高い数値を記録していました。努力性肺活量(FVC)は通常ケア群の平均 65.4% に対して理学療法群が 73.0%(P = 0.014)、1秒量(FEV1)も 66.1% に対して 73.2%(P = 0.023)と、しっかり息を吸い込んで吐き出す力に差が出たんです。
抜管後のスパイロメトリー測定結果(Reshiaら 2023、RCT、n=70)
| 項目 | 通常ケア群 | 即時胸部理学療法群 | P値 |
|---|---|---|---|
| 努力性肺活量(FVC) | 65.4% | 73.0% | P = 0.014 |
| 1秒量(FEV1) | 66.1% | 73.2% | P = 0.023 |
本表は引用文献(Reshiaら 2023)に記載された抜管後のスパイロメトリー測定数値を整理したものです。
血液ガス分析でも、酸素分圧(PaO2)は通常ケア群の平均 72.1 mmHg に対し、理学療法群では 81.03 mmHg(P = 0.010)と高値でした。二酸化炭素分圧(PaCO2)も通常ケア群の 49.5 mmHg に対し、理学療法群は 44.2 mmHg(P = 0.031)と低く保たれていて、酸素飽和度(SaO2)も 79.5% に対し 87.1%(P = 0.010)という結果でした。
抜管後の動脈血液ガス分析結果(Reshiaら 2023、RCT、n=70)
| 項目 | 通常ケア群 | 即時胸部理学療法群 | P値 |
|---|---|---|---|
| 動脈血酸素分圧(PaO2) | 72.1 mmHg | 81.03 mmHg | P = 0.010 |
| 動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2) | 49.5 mmHg | 44.2 mmHg | P = 0.031 |
| 動脈血酸素飽和度(SaO2) | 79.5% | 87.1% | P = 0.010 |
本表は引用文献(Reshiaら 2023)に記載された抜管後の血液ガス数値を整理したものです。
酸素分圧が約9mmHg高くて酸素化が保たれているのは、数値だけ見るとかなり魅力的じゃね?って思えるよね。だけどICUで普段働いている感覚からすると、平均年齢38歳で重い持病や呼吸不全のない若い人たちを選んだ試験だから、うちの病棟に多い80代で心不全があったり術後出血のリスクがある患者さんにそのまま当てはまるかというと、うーむ、手放しでは喜べないかも。
うちも以前、抜管直後の患者さんを受け持ったとき「絶対痰を出させるぞ!」って気合入れてタッピングのカップ手を作ったら、自分の手首がポキッと鳴ってただのセルフ関節痛で今これ、ってなって草生えたことがあって恥ずかしすぎました。無理に力技で叩けばいいってもんじゃないんだよね。
ちなみに人工呼吸器まわりの基本ケアや感染対策については、人工呼吸器関連肺炎(VAP)予防バンドルの解説記事 でも詳しくまとめているので、気管チューブが入っている時期の管理とセットで振り返っておくと勤務中の視野がグッと広がります。
全員にルーチンでやっていいの?ガイドラインの見解は?
「論文で数値が上がってるなら、抜管した人全員にすぐ胸部PT入れたら優勝じゃん!」って思いたくなるよね。
だけど、集中治療のガイドラインや専門家のレビューを読むと、話はそう甘くありません。
米国呼吸ケア学会(AARC)のガイドライン(3)や集中治療領域のレビュー(2)では、合併症のない一般的な患者さんに対して、一律(ルーチン)に胸部理学療法を行うことは推奨されていません。
なぜかというと、胸部理学療法にはやってはいけない危険な状態(禁忌)がたくさんあるからです。Spapenらの報告(2)でも、次のような病態では胸部理学療法が有害になる恐れがあると指摘されています。
- ドレーンが入っていない気胸(胸を叩いたり圧をかけたりすると気胸が悪化して大事故になる)
- ショックや多量の昇圧剤使用など循環動態の不安定(無理に動かすと血圧が破綻する)
- 活動性の喀血や肺出血(刺激で出血が増加する恐れ)
- 開胸・開腹術直後の創部離開リスクや胸壁不安定性(傷口が開いたり激痛でショックを起こす)
- 急性期の頭蓋内圧亢進(特に頭を下げる体位ドレナージは頭蓋内圧を跳ね上げるため絶対禁忌)
- 急性気管支攣縮(喘息発作中に叩くと気道が余計に狭くなる)

良かれと思って胸を叩いたり頭を下げたりした結果、ドレーンが入っていない気胸を悪化させたり、せっかく落ち着いてきた血圧が乱高下したりしたら完全に大惨事です。論文に良いデータがあるからといって無条件にGOサインが出るわけじゃなくて、自力で喀出できない痰が詰まっているか、無気肺の兆候があるかを見極めた上で慎重に行うべきだとされています。
ベッドサイドで呼吸音を聞き分ける基本については、聴診器の使い分けとエビデンスの記事 も参考になります。まずは自分の耳でしっかり音を聞いて、本当に排痰手技が必要な状況なのか確かめるのが先決ですね。
限界点も知っておこう
2023年の研究(1)を読むときは、いくつか限界があることも知っておく必要があります。
まず、エジプトの1施設・10床のICUで行われた研究で、患者数は合計70名と小規模です。
そして対象患者さんの平均年齢は約38歳とかなり若く、脳死、呼吸不全、人工呼吸器依存、緩和ケア、気管切開の患者さんは最初から除外されていました。つまり「全身状態が比較的安定していて、自力回復力がある若い患者さん」を集めた試験なんです。ICUで私たちが普段出会うような、複数の基礎疾患を抱えた高齢患者さんや、術後出血や循環不全でヒヤヒヤしている患者さんにそのまま当てはまるわけではありません。

さらに、この研究で評価しているのは抜管後1週間のスパイロメトリー数値や血液ガスデータです。再挿管になってしまった割合や、ICUに滞在した日数、退院後の経過といった長期的な治療成績までは追跡されていません。
だから、「抜管直後に胸部PTを入れれば再挿管が防げて退院が早まる」とまでは断定できないのが本当のところです。
今後どうしていくべきなの?(手順・例外・判断基準)
「じゃあ明日からのICU勤務で、抜管直後や術後の患者さんを受け持ったらどう動けばいいの?」って迷いますよね。
現場で一番大切な鉄則は、施設の手順・安全基準 > 一次論文のエビデンス という優先順位です。どんなに有名なジャーナルに良い結果が載っていても、自分の病院のマニュアルや安全基準、主治医の安静度指示を飛び越えて看護師が独断で手技を始めるのは絶対に避けなければいけません。
迷ったときは、次のステップで頭を整理してみるのがおすすめです。
- 自発呼吸と気道の安定性を確かめる
抜管直後は喉頭浮腫(stridor)や呼吸筋疲労がないかを最優先で観察します。息を吸うのが辛そうな時にいきなり体位を変えたり胸を押したりすると、余計に呼吸困難感を強めてしまいます。 - 禁忌や慎重適応がないかチェックする
未ドレナージの気胸がないか、昇圧剤が増量中などで循環が揺れていないか、術直後のドレーン排液や出血傾向がないかを確認します。頭蓋内圧が高い患者さんに頭低位をとらせるのは厳禁です。 - 自施設のプロトコルと主治医指示を確認する
病棟の早期離床基準や呼吸リハビリ指示箋を確認し、理学療法士への依頼が出ているかを確かめます。 - 本当に排痰困難があるかターゲットを絞る
聴診で分泌物の貯留音が聞こえるか、自力でしっかり咳ができて痰が出せているかを評価します。自分でしっかり喀出できているなら、無理な徒手排痰手技は不要です。 - 多職種で連携して負担の少ない方法から始める
痛みが強くて深く息が吸えない術後患者さんなら、まずは医師に相談して適切な鎮痛を行ってもらうのが先決です。理学療法士と相談しながら、ベッドアップや端座位など無理のない体位調整から進めていきます。

以前の勤務で「早く痰を出させなきゃ!」と焦って患者さんに深呼吸を促そうとした時、「息を吸って〜吐いて〜!」と必死に声かけしている自分の方が過換気になって息切れしたことがありました。焦って自分がキャパい状態になるのが一番かっこ悪いですからね。まずは落ち着いて患者さんの状態をアセスメントしましょう。
✔まとめ
✔ 即時胸部理学療法(早期離床・呼吸訓練・排痰手技)は、選ばれた患者群において抜管後の肺機能や血ガス数値を改善させた報告がある
✔ ただしルーチン(全員一律)での実施は推奨されておらず、未ドレナージ気胸や血行動態不安定、頭蓋内圧亢進など多くの禁忌が存在する
✔ 現場の判断では、論文のエビデンスよりも自施設の安全マニュアルや主治医の指示、患者個別の禁忌評価が常に最優先される
個人的には、抜管直後はまず自発呼吸の落ち着きと循環の安定をしっかり見届けるのが何より大切だと感じています。痰がゴロゴロして自力で出せない時に、十分な除痛と安全確認を行った上で、理学療法士や医師と連携して優しくケアを進めていくのが一番安心できる近道じゃないかなと思います。
よくある質問
Q1. ICUで抜管直後の患者に即時胸部理学療法は効果があるの?
48時間挿管後に抜管された成人70名を対象とした2023年の無作為化比較試験では、早期離床や呼吸訓練、排痰法を組み合わせた即時胸部理学療法により、肺活量や酸素化の改善が報告された。ただしこの研究は呼吸不全患者を除外した小規模な検証であり、臨床現場では全員への一律実施は推奨されていない。実際のICU勤務では論文のエビデンスよりも各施設の安全手順や主治医の指示、患者個別の禁忌評価を優先して判断する必要がある。
Q2. 抜管直後に胸部理学療法をやってはいけない禁忌や注意すべき状態はある?
未ドレナージの気胸、ショックや多量の昇圧剤使用など血行動態が不安定な状態、活動性の喀血や肺出血、急性期の頭蓋内圧亢進、開胸・開腹術直後の胸壁不安定性や創部離開リスクがある場合は、胸部理学療法により病態が悪化する恐れがあるため禁忌または極めて慎重な判断が求められます。
Q3. 施設の手順と論文の結果が違うときはどちらを優先するべき?
臨床現場では常に各施設の安全手順やマニュアル、主治医の指示が最優先されます。論文で効果が報告されていても、対象患者の背景や安全管理の前提が異なるため、自施設の手順や患者個別の禁忌評価を無視して独断で手技を行うことは避ける必要があります。
夜勤明け、スタッフルームのパイプ椅子に腰を下ろすと、背中から首にかけての強張りに思わず息が漏れます。朝の申し送りを終えた瞬間は、体の重さが一気に出やすい時間帯です。
ロッカーから出して腰に当てたり首を預けたりする私物として、「MOGU 筒型クッション」を休憩用に取り入れるという使い方もあります。パウダービーズのやわらかな感触があります。仮眠や少し足を伸ばしたいときに、自分をいたわる道具として重宝する場面もあります。
病棟でのケアは、施設手順や医師指示、患者安全が最優先です。こうした私物のアイテムは、あくまで勤務の合間に自分自身の体を休めるための補助として、気楽に使うのがちょうどよい距離感です。

参考文献
(1) Reshia, F. A. A., Salameh, B., Alsadaan, N., Alqahtani, M., Ayed, A., Kassabry, M. F., & Abo Seada, A. I. (2023). Enhancing pulmonary function and arterial blood gas readings through immediate chest physiotherapy among extubated patients in ICU. Journal of International Medical Research, 51(11), 3000605231208600. https://doi.org/10.1177/03000605231208600
(2) Spapen, H., De Regt, J., & Honoré, P. M. (2017). Chest physiotherapy in mechanically ventilated patients without pneumonia—a narrative review. Journal of Thoracic Disease, 9(1), E44–E49. https://doi.org/10.21037/jtd.2017.01.32
(3) Strickland, S. L., Rubin, B. K., Drescher, G. S., Haas, C. F., O’Malley, C. A., Volsko, T. A., Branson, R. D., & Hess, D. R. (2013). AARC Clinical Practice Guideline: Effectiveness of nonpharmacologic airway clearance therapies in hospitalized patients. Respiratory Care, 58(12), 2187–2193. https://doi.org/10.4187/respcare.02925
(4) Pozuelo-Carrascosa, D. P., Torres-Costoso, A., Alvarez-Bueno, C., Cavero-Redondo, I., López Muñoz, P., & Martínez-Vizcaíno, V. (2022). Efficacy of physiotherapy interventions on weaning in mechanically ventilated critically ill patients: A systematic review and meta-analysis. Frontiers in Medicine, 9, 889218. https://doi.org/10.3389/fmed.2022.889218



