音楽療法の基礎とICUでの応用
音楽療法とは、音楽を用いて患者の心身の健康をサポートする治療法です。この療法は、様々な医療環境で用いられており、特に集中治療室(ICU)においては、患者のストレスや不安を軽減するための有効な手段として注目されています。
今回はこの研究を紹介します。
集中治療室で人工呼吸を受けている患者に対する音楽療法についての研究
この研究は、集中治療室(ICU)で人工呼吸器を使用している患者に対する受動的音楽療法の影響を検討した。118人の患者がランダムに音楽療法グループと標準ケアグループに割り当てられた。
音楽療法グループは、個々の患者のニーズに合わせた30分間のライブ音楽療法を受けた。その結果、音楽療法を受けた患者は、リッチモンド鎮静スケール(RASS)と重症患者用疼痛観察ツール(CPOT)のスコアが標準ケアグループと比較して大幅に異なり、心拍数も有意に低下した。
ただし、酸素値には顕著な差は見られなかった。この研究は、ICUでの音楽療法の利益をさらに証明し、人工呼吸器を使用している患者においてもその効果を示した。
ICUでは、患者は重い病気や手術の影響で大きなストレスを感じることが多く、これが回復を妨げる要因となることがあります。音楽療法は、そんな緊張した環境の中で、患者に安らぎを提供し、心理的な負担を軽減することが期待されます。生演奏や録音された音楽を用いて、患者の感情的な安定や身体的なリラクゼーションを促進することが目的です。
このブログでは、音楽療法がどのようにICUで応用されているのか、そしてそれが患者の健康にどのように貢献しているのかについて、さらに詳しく掘り下げていきます。
音楽療法の効果:科学的根拠
この研究の結果、音楽療法を受けた患者群では、心拍数の減少や不安レベルの改善が見られました。これは音楽が生理的な反応に影響を与えることを示唆しています。
また、患者の感情的な安定にも寄与し、ICUにおけるストレスの軽減に効果的であることが示されました。
特に注目すべきは、音楽療法が心拍数に与える影響です。この研究では、音楽療法後に患者の心拍数が有意に低下したことが示されました。これは音楽が自律神経系に作用し、リラクゼーション効果をもたらすことを示唆しています。
さらに、音楽療法が患者の鎮静レベルにも好影響を与えることが分かりました。
音楽による安心感や気分の向上が、不安感の軽減に繋がる可能性があると考えられます。これらの結果から、音楽療法はICUにおける患者ケアにおいて有望な手段である可能性があります。
音楽療法の今後の展望と看護への応用
この研究は、音楽療法がICUにおける患者ケアにおいて重要な役割を果たす可能性を示唆しています。音楽療法は、患者の心理的および生理的な健康をサポートする新しいアプローチとして、今後も研究と実践の両方でさらに発展していくことが期待されます。
看護実践においては、音楽療法を取り入れることで、患者の不安やストレスを軽減し、より快適な治療環境を提供することができます。また、看護師や医療スタッフが音楽療法についての知識を深めることで、患者一人ひとりに合ったケアを提供するための新たな手段が得られるでしょう。
この研究を通じて明らかになった音楽療法の効果を基に、今後はさらに多くの医療機関での採用が進むことが期待されます。音楽が持つ癒しの力を医療の現場で活用し、患者さんのQOL(Quality of Life)向上に貢献していくことが、看護師としての新たな使命となるかもしれません。
参考文献
Golino AJ, Leone R, Gollenberg A, et al. Receptive Music Therapy for Patients Receiving Mechanical Ventilation in the Intensive Care Unit. Am J Crit Care. 2023;32(2):109-115. doi:10.4037/ajcc2023499