ICUの脳外科患者への腹部マッサージの臨床試験
この研究の魅力は、その革新的な方法論にあります。研究はランダム化比較試験として設計され、80名の脳外科ICU患者をランダムに二つのグループに分けました。一つのグループは腹部マッサージを受け、もう一つのグループは通常のケアを受けたのです。この方法により、腹部マッサージの効果を客観的に測定することができました。
最初の排便まで毎朝夕15分ずつ、合計30分間のマッサージが行われたと述べられています。
研究では、腹部マッサージを行う時間、方法、圧力などの詳細にも注意を払いました。また、患者の便通状況や便秘のリスク要因を評価するために、様々な指標を用いてデータを収集しました。これにより、腹部マッサージが脳外科ICU患者の便通に及ぼす影響を、より深く理解することが可能になりました。
腹部マッサージが脳外科ICU患者に与えた影響
腹部マッサージを受けたグループの患者は、腸の音の戻りや最初の排便までの時間が、通常ケアを受けたグループに比べて有意に短縮されました。これは、腹部マッサージが脳外科ICU患者の便通に肯定的な影響を与えることを示しています。
腹部マッサージ群の患者は、対照群に比べて、腸の音が戻る時間と最初の排便の時間が早くなりました（P < .05）。便秘リスク評価尺度（CRAS）スコアは、腹部マッサージ群が19.02 ± 1.81、対照群が20.45 ± 2.61でした。
これらの結果から、腹部マッサージが便秘予防に有効な看護介入であることが示唆されます。次のセクションでは、これらの結果が看護実践にどのように応用されるかを探ります。
腹部マッサージによる患者ケアの改善
この研究から得られた知見は、看護実践において重要な意味を持ちます。腹部マッサージが脳外科ICU患者の便通改善に有効であることが示されたことで、看護師は新たな介入手法を取り入れることが可能になります。
この方法は、薬物治療に頼ることなく、患者の快適さを高める助けとなるでしょう。
また、この研究は看護師のスキルと知識の拡充にも寄与します。腹部マッサージの技術を学ぶことで、看護師は患者の身体的な快適さだけでなく、精神的な安心感をも提供することができるようになります。
さらに、この介入は家族や他のケア提供者にも指導することができ、患者の総合的なケアに貢献します。
この研究を通じて、脳外科ICU患者のケアにおける新しい可能性が開かれました。これからの看護実践において、腹部マッサージは重要な役割を果たすことになるでしょう。
参考文献
Altun Ugras G, Yüksel S, Isik MT, Tasdelen B, Dogan H, Mutluay O. Effect of abdominal massage on bowel evacuation in neurosurgical intensive care patients. Nurs Crit Care. 2022;27(4):558-566.