なぜ乳がん術後の患側で点滴や採血は禁忌なのか?ダメなのか?【看護技術のエビデンス】

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はい、乳がん患側の禁忌シリーズ2段です。

第一弾はこちらもあるから良かったら見てね。

乳がん術後患者の患側側の血圧測定は禁忌?

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乳癌患者の患側に点滴や採血はどうなの?

点滴や採血はどうなん?って感じですよね。

なぜ患側の点滴や採血はダメなのか?分かりやすい説明を引用します。

また、リンパ節の主な役割の1つに“免疫機能”があります。
リンパ節は、リンパ小節とリンパ洞で構成されています。リンパ小節は、免疫抗体の生産に必要な細胞のリンパ球が集まり、ここで分裂して増殖されます。リンパ洞は、組織細胞からなり、抗体生産と、細菌や老廃物などを濾過して全身に循環するのを防ぐフィルターのような機能をもっています。
しかし腋窩リンパ節郭清の影響によって、これらリンパ節の機能は低下してしまいます。この免疫機能が低下した状態での患側からの採血や注射は、針でできたわずかな傷からでも細菌が侵入してしまい、それが原因で感染を引き起こすこともあります 引用サイト

これって🦐エビ🦐あるの?探していきます

動画解説

作業中や寝る前に見るならこちらがおすすめです

 

乳がん術後の患側での採血や点滴は感染を起こすからダメ?

実際調べた研究はなさそうです!だからなんとも言えないんだよなぁ。

一応理論的な展開をすると、

リンパ浮腫を発症してる人は感染性合併症のリスクが高いです。(1)

また、腋窩リンパ節郭清後の感染性合併症(主に上肢蜂窩織炎)の発生率は5~10%と最大で19%とする研究もあります。そして、この感染症は上肢リンパ浮腫の発症または増悪に関与する可能性がある。(2)

リンパ節郭清をしている患者さんでは少し患側の感染症のリスクが上がるようですね。

これは手術による破壊と放射線によって静脈とリンパ管が障害され、皮膚などの防御機能が低下するからと考えられています。看◯rooさん流石ですね!

さらに採血や点滴自体に感染のリスクがあります。

大体点滴は1日に約0.1%の感染のリスクがあります。(3)
まぁ末梢静脈点滴の感染リスクは非常に低いとされていますが、リスクが無いわけではないのです。

✔乳がん術後のリンパ節郭清後の上肢は感染しやすい。
✔点滴など針刺しもわずかながら感染リスクがある

これらのことから点滴や採血は禁忌とされているようですね。

もちろん確かめた研究は無いのでエビデンスレベルは低いです。

さらに血圧の所でも述べたけど、採血や点滴と浮腫についても気になったので調べました。

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乳癌術後の患者に採血や点滴をすると浮腫はおこるのか?

浮腫が起こるとされる研究

2005年の前向き研究では188名の乳がん術後患者を対象にしました。39名(20.7%)がリンパ浮腫を発症し、病院での皮膚穿刺は有意差を認めリスク比2.44倍(95%CI 1.33-4.47)でした。(4)

ーむ皮膚穿刺があいまいなのとしいて言えばサンプル数が少ないかなーという印象。

また2012年のコホート研究では患側+化学療法(ネオアジュバント療法)では浮腫が発生するようです。感染も浮腫のリスクを高めるという結果(5)

患側で化学療法を投与すると浮腫が出るリスクがあるという研究。逆に言えば普通の点滴は有意差なかったのかも。(なぜか調査項目に入っていない)

浮腫はないとする研究

2016年の5個未満のリンパ節を切除した女性241人と5個以上のリンパ節を切除した女性209人の乳がん術後の方を手術前、4週間以内、手術後6ヶ月、12ヶ月、18ヶ月に評価しました。対象者には前週に起こった出来事について毎週日記をつけてもらいました。
結果は採血、静脈注射と浮腫は有意差なしでした。ちなみにリンパ節を多く切除した方が浮腫になりやすい結果でした。(6)

2005年~2014年にかけてある病院で乳がん手術を受けた患者さんが患側の採血や静脈注射をされた回数と浮腫の関係を解析した結果でも有意差はありませんんでした。これはリンパ節生検のみで郭清していない人が71%なので微妙かもしれません。(7)

2016年の30個くらいの論文を調べたレビューでは、採血や関連する医療行為には可能な限りリスクのない腕を使用することを推奨する。リスクのある腕での単独の医療行為や外科的治療は、腋窩リンパ節郭清の既往がある患者であっても、リンパ浮腫のリスクを増加させないことが頻繁に示されていることを患者に伝えるべき(8)

まぁあんまりはっきりしていないけど、浮腫が起きない可能性もあるから神経質になる必要ないよ!という感じだと思います。

というのも近年では浮腫と関連しないという研究(9)(10)が結構発表されているからです。

なので、

採血や静脈注射に関しては浮腫の可能性があるかもしれない。否定している論文もありエビデンスレベルは低いです。

特にリンパ節郭清をした患者さんでは。リンパ節郭清をしていない場合に関しては気にする必要はないでしょうね!

【2024年アップデート】ガイドラインでついに答えが出た!

ここからが2024年の新しい情報です!

実は2024年に日本と海外でガイドラインが改訂されて、この問題についてかなりはっきりしたエビデンス評価が出ました。

日本リンパ浮腫学会「リンパ浮腫診療ガイドライン 2024年版」

2024年3月に6年ぶりに改訂された日本のガイドラインでは、CQ3で「採血・点滴、血圧測定、空旅、感染などは続発性リンパ浮腫の発症や増悪の原因となるか?」という質問に対してエビデンス評価をしています。(11)

その結果は…

生活関連因子 エビデンス評価
採血 Substantial effect on risk unlikely(大きな関連なし)
点滴 Limited-no conclusion(証拠不十分)
血圧測定 Substantial effect on risk unlikely(大きな関連なし)
感染 Probable(ほぼ確実にリスク因子)

おお! 採血は「大きな関連なし」 と評価されました!点滴はまだ証拠不十分ですが、少なくとも採血については浮腫との関連が低いことがガイドラインで示されたわけです。

ただし 感染は「ほぼ確実にリスク因子」 とされているので、やはり感染予防は重要ということですね。

MASCC 2024ガイドライン(国際ガイドライン)

2024年2月には国際的な支持療法学会(MASCC)からも乳がん関連リンパ浮腫予防のガイドラインが発表されました。(12)

このガイドラインでは 採血や点滴を禁止する推奨は出ていません

代わりに、以下の因子がハイリスクとして挙げられています:

BMI ≥30 kg/m²
15個以上のリンパ節切除
腋窩への放射線照射

また、予防として 前向き監視プログラム(定期的な上肢の計測)予防的圧迫スリーブ が推奨されています。

ONS 2022文献レビュー

2022年のONS(米国腫瘍看護学会)の文献レビューでも、採血や点滴について興味深い結論が出ています。(13)

運動、BMI<25の維持、マッサージはリンパ浮腫リスクを下げるエビデンスがある。一方、採血や点滴を避けることについてはエビデンスが限られている。 ベストプラクティスは個々の患者のリスク因子を評価してから、エビデンスに基づいた注意事項を推奨すること。

つまり、一律に「患側での採血・点滴禁止!」ではなく、 患者さんごとのリスクを評価して判断しましょう ということですね。

 

結論:乳がん術後の患側で点滴や採血はダメなのか?【2024年版】

禁忌ではないけど、リンパ節郭清している場合は、まずは健常な側で採血やルートは取った方が良いかもしれない。

両方の乳がん術後だったり、健側で採血、ルートが取れない場合は患側で実施するのはアリです!

リンパ節郭清していない場合は気にする必要ないです。

2024年ガイドラインを踏まえた追加ポイント

日本のガイドラインで「採血は浮腫と大きな関連なし」と評価された
点滴についてはまだ証拠不十分だが、禁忌とは言えない
感染は確実なリスク因子なので、清潔操作は徹底する
BMI≥30や15個以上のリンパ節切除などハイリスク因子のある患者は注意
一律禁止ではなく、個別のリスク評価に基づいて判断することが推奨されている

医療っていうのはこういう曖昧な答えが多いです。医療において絶対なんて言葉、めったにありません。

患側で浮腫を起こすことや感染リスクに関してはまだまだエビデンス不足ですね。

今後新しい研究がアップデートされることを期待しましょう!

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参考文献

(1)Simon, M. S., & Cody, R. L. (1992). Cellulitis after axillary lymph node dissection for carcinoma of the breast. The American Journal of Medicine, 93(5), 543–548.

(2)Sakorafas, G. H., Peros, G., & Cataliotti, L. (2006). Sequelae following axillary lymph node dissection for breast cancer. Expert Review of Anticancer Therapy, 6(11), 1629–1638.

(3)Maki, D. G., Kluger, D. M., & Crnich, C. J. (2006, September). The risk of bloodstream infection in adults with different intravascular devices: a systematic review of 200 published prospective studies. In Mayo Clinic Proceedings (Vol. 81, No. 9, pp. 1159-1171). Elsevier.

(4)Clark, B., Sitzia, J., & Harlow, W. (2005). Incidence and risk of arm oedema following treatment for breast cancer: a three-year follow-up study. QJM : monthly journal of the Association of Physicians, 98(5), 343–348.

(5)Bevilacqua, J. L., Kattan, M. W., Changhong, Y., Koifman, S., Mattos, I. E., Koifman, R. J., & Bergmann, A. (2012). Nomograms for predicting the risk of arm lymphedema after axillary dissection in breast cancer. Annals of surgical oncology, 19(8), 2580–2589.

(6)Kilbreath, S. L., Refshauge, K. M., Beith, J. M., Ward, L. C., Ung, O. A., Dylke, E. S., French, J. R., Yee, J., Koelmeyer, L., & Gaitatzis, K. (2016). Risk factors for lymphoedema in women with breast cancer: A large prospective cohort. Breast (Edinburgh, Scotland), 28, 29–36.

(7)Ferguson, C. M., Swaroop, M. N., Horick, N., Skolny, M. N., Miller, C. L., Jammallo, L. S., Brunelle, C., O’Toole, J. A., Salama, L., Specht, M. C., & Taghian, A. G. (2016). Impact of Ipsilateral Blood Draws, Injections, Blood Pressure Measurements, and Air Travel on the Risk of Lymphedema for Patients Treated for Breast Cancer. Journal of clinical oncology : official journal of the American Society of Clinical Oncology, 34(7), 691–698.

(8)Asdourian, M. S., Skolny, M. N., Brunelle, C., Seward, C. E., Salama, L., & Taghian, A. G. (2016). Precautions for breast cancer-related lymphoedema: risk from air travel, ipsilateral arm blood pressure measurements, skin puncture, extreme temperatures, and cellulitis. The Lancet. Oncology, 17(9), e392–e405.

(9)Dawson, W. J., Elenz, D. R., Winchester, D. P., & Feldman, J. L. (1995). Elective hand surgery in the breast cancer patient with prior ipsilateral axillary dissection. Annals of surgical oncology2(2), 132–137.

(10)Hershko, D. D., & Stahl, S. (2007). Safety of elective hand surgery following axillary lymph node dissection for breast cancer. The breast journal13(3), 287–290. https://doi.org/10.1111/j.1524-4741.2007.00423.x

(11) 日本リンパ浮腫学会編. (2024). リンパ浮腫診療ガイドライン 2024年版 第4版. 金原出版. https://www.kanehara-shuppan.co.jp/books/detail.html?isbn=9784307204774

(12) Wong, H. C. Y., Wallen, M. P., Chan, A. W., Dick, N., Bonomo, P., Bareham, M., Wolf, J. R., van den Hurk, C., Fitch, M., Chow, E., & Chan, R. J.; MASCC BCRAL Expert Panel. (2024). Multinational Association of Supportive Care in Cancer (MASCC) clinical practice guidance for the prevention of breast cancer-related arm lymphoedema (BCRAL): international Delphi consensus-based recommendations. EClinicalMedicine, 68, 102441. https://doi.org/10.1016/j.eclinm.2024.102441

(13) Flores, A. M., Spinelli, B. A., Eden, M. M., & Galantino, M. L. (2022). A Review of the Literature Related to Limb Precautions After Lymph Node Dissection. Clinical Journal of Oncology Nursing, 26(1), 31-38. https://doi.org/10.1188/22.CJON.31-38

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