「すみません、もう一回刺し直していいですか…?」
この言葉、看護師なら一度は言ったことあるんじゃないかな。
末梢静脈カテーテル留置、いわゆる 「ルート確保」 。看護師にとってガチで避けて通れない手技のひとつだよね。新人のころは先輩の視線を感じながら手が震えて、ベテランになっても「今日の患者さん、血管見えない…」って焦る日がある。
Xでも「ルート取れなくて3回刺した」「血管が逃げる」みたいな看護師のツイートがバズってたりする。看護界隈では永遠のテーマっぽい。
でもさ、実際のところ ルート確保ってどれくらい失敗してるの? って気になりません?
「自分だけ下手なのかな…」って思ってる人、マジで安心してほしい。
これって🦐えび🦐あるの?2024年の大規模メタ分析を見ていきましょう!
末梢静脈カテーテル(PIVC)は世界で年間20億本以上使われている
まず基本的なところから。
末梢静脈カテーテル(Peripheral Intravenous Catheter:PIVC)は、入院患者にとって 最も一般的に行われる侵襲的処置 だ(1)。
点滴、薬剤投与、輸血、採血…もうありとあらゆる場面で必要になる。
世界全体で 年間20億本以上 が使用されているというから、えぐい数だよね(1)。
そんなに日常的に行われてるんだから、「まぁ安全でしょ」「失敗もそんなにないでしょ」って思いがちだけど…
実はそうでもないのである。
衝撃:PIVCの36.4%が治療完了前に失敗している
2024年にMarshらが発表したメタ分析がえぐい(1)。
この研究は 41の観察研究と28のランダム化比較試験(RCT) を統合し、なんと 478,586本 の末梢静脈カテーテルを分析した超大規模なシステマティックレビュー・メタ分析である。
その結果…
全原因によるPIVC失敗率は36.4%(95%CI:31.7〜41.3)
つまり、 3本に1本以上が治療完了前に失敗している のだ。
発生率でいうと 100カテーテル日あたり4.42件 。
ほんmoney…? これガチでヤバくない?
失敗の内訳
PIVCが「失敗」するって具体的にどういうこと?って思うよね。失敗にはいろいろな原因が含まれる:
- 閉塞(詰まっちゃう)
- 静脈炎(血管が炎症を起こす)
- 漏出・血管外漏出(点滴が血管の外に漏れる)
- 自然抜去・事故抜去(勝手に抜ける・引っかけて抜ける)
- 感染
「あ、ルート漏れてる!」「静脈炎起きてるから差し替えね」って場面、看護師なら日常茶飯事だと思う。
でもそれが 3本に1本の割合で起きている って数字で見ると、けっこうインパクトあるよね。
感染リスクは?
ちなみに感染についても見てみよう(1)。
| 感染の種類 | 発生率 | 100,000カテーテル日あたり |
|---|---|---|
| カテーテル関連血流感染(CABSI) | 0.028% | 4.40件 |
| 局所感染 | 0.150% | 65.1件 |
1本あたりの感染率はかなり低い。「まぁ末梢点滴の感染リスクは低いよね」ってのは事実だ。
だけど、 年間20億本以上 使われていることを考えると…
0.028%でも 年間56万件以上の血流感染 が起きている計算になる。
数が多すぎて、低い感染率でも絶対数はえぐいことになるのだ。
重要ポイント
- PIVCの 36.4% が治療完了前に失敗する
- 3本に1本 は差し替えが必要になる計算
- 感染率は低いが、絶対数は膨大
「血管が見えない…」にはエコーガイドが効く?
さて、ここからが面白い話。
「ルート取れない問題」に対して、近年注目されているのが エコーガイド下末梢静脈カテーテル留置 だ。
超音波(エコー)で血管をリアルタイムに見ながら針を刺す方法のこと。
「え、エコーって医師が使うやつじゃないの?」って思うかもしれないけど、海外では 看護師がエコーを使ってルート確保する のがどんどん普及してきている。
2024年にTianらが発表したシステマティックレビュー・メタ分析では、 看護師が行う エコーガイド下PIVC留置と従来法を比較している(2)。
研究の規模
- 23研究(17のRCTと6つのコホート研究)
- 4,530名 の患者が対象
- エコーガイド群:2,051名、従来法群:2,479名
けっこうな規模の研究だ。
結果:一発成功率が約3倍に!
肝心の結果がこちら(2):
| アウトカム | 結果 |
|---|---|
| 一発成功率(オッズ比) | OR = 2.95(95%CI:1.86〜4.69) |
| 穿刺にかかる時間 | エコーガイドの方が短い(SMD = −0.62) |
| 穿刺回数 | エコーガイドの方が少ない(SMD = −0.55) |
OR(オッズ比)が2.95ってことは、ざっくり言うと エコーを使った方が一発で成功しやすく、そのオッズは約3倍 ってこと。「オッズ比って何?」って人は、 エコーありの方が圧倒的に有利 って理解でOK。
しかも穿刺にかかる時間も短くなるし、刺す回数も減る。
患者さんにとっても看護師にとっても嬉しい結果じゃね?
小児ではさらに効果的
サブグループ解析も面白い(2)。
| 対象 | 一発成功率(OR) | 時間短縮効果(SMD) |
|---|---|---|
| 成人 | 2.83(95%CI:1.51〜5.33) | −0.47(有意差なし) |
| 小児 | 3.17(95%CI:1.48〜6.80) | −0.83(有意差あり) |
小児の方がオッズ比が高くて、しかも時間短縮効果も統計的に有意なのだ。
子どもって血管が細いし、じっとしてくれないし、泣くし… 小児のルート確保ってマジで難易度が高いよね。
そんな小児でこそエコーガイドの恩恵が大きいっていうのは、わかりみが深い結果だ。
救急でも効果あり
臨床セッティング別の解析では(2):
- 救急:OR = 2.54(95%CI:1.42〜4.53)
- 非救急:OR = 3.08(95%CI:1.37〜6.91)
どちらの環境でもエコーガイドの方が優れていた。
救急なんて「早くルート取って!」ってプレッシャーがハンパないのに、そんな状況でもエコーが使えるのは心強い。
重要ポイント
- エコーガイドで一発成功のオッズが 約3倍 に向上
- 穿刺時間も短縮 、刺す回数も減少
- 小児 でさらに効果が顕著
- 救急・非救急ともに有効
この研究の限界点も知っておこう
もちろん、この研究にも限界はある。ちゃんと把握しておこう。
PIVC失敗率の研究(1)について
- 「失敗」の定義が研究によって異なる可能性がある
- 観察研究とRCTが混在しているため、異質性がある
- 地域や施設によって実践レベルに差がある
エコーガイドの研究(2)について
- 研究間の異質性が高い(I² = 88%)
- エコーの機種や看護師の訓練レベルがバラバラ
- ほとんどが欧米の研究で、日本のデータが含まれていない
- 患者満足度を測定した研究が少ない
- エコーガイドの習熟に必要なトレーニング期間は不明
特に 日本では看護師がエコーを使ってルート確保すること自体がまだ一般的ではない ので、そのまま日本の臨床に当てはめるのは難しいかもしれない。
結論
まとめ
✔ PIVCの36.4%が治療完了前に失敗している =3本に1本が差し替え(1)
✔ 感染率は低い(0.028%)が、年間20億本以上使われるため絶対数は膨大 (1)
✔ エコーガイドで一発成功のオッズが約3倍(OR = 2.95)に向上する (2)
✔ 小児ではさらに効果が大きい(OR = 3.17) (2)
✔ 穿刺時間の短縮・穿刺回数の減少も確認されている (2)
ここからは個人的な感想。
「3本に1本が失敗」って聞いて、正直ちょっとホッとした看護師もいるんじゃないかな。
「自分だけが下手なわけじゃないんだ」って。
もちろんだからといって「失敗してもしょうがない」ってことじゃないんだけど、PIVCの失敗って 個人の技術だけの問題じゃなくて、患者側の血管の状態や使用する器材、留置後の管理など複合的な要因 で起きるものなんだよね。
エコーガイドについては、日本ではまだ看護師が日常的に使える環境は少ないかもしれない。でも海外ではどんどん普及してきているし、ポータブルエコーも安くなってきている。
将来的には「ルート確保にエコー使うのが当たり前」っていう時代が来るかもしれない。
そのときに「あのとき論文読んでおいてよかった」ってなったら嬉しいな。
まぁ、まずは目の前の患者さんの血管と向き合って、温罨法して、駆血帯巻いて、いつも通りがんばりましょう。
それでもダメなときは、先輩を呼ぶ勇気も大事な技術のひとつです。
参考文献
(1) Marsh, N., Ullman, A. J., et al. (2024). Peripheral intravenous catheter infection and failure: A systematic review and meta-analysis. International Journal of Nursing Studies, 151, 104673. https://doi.org/10.1016/j.ijnurstu.2023.104673
(2) Tian, Y., Zhong, Z., Dougarem, D., & Sun, L. (2024). The ultrasound-guided versus standard technique for peripheral intravenous catheter placement by nurses: A systematic review and meta-analysis. Heliyon, 10(9), e30582. https://doi.org/10.1016/j.heliyon.2024.e30582

