NP関連論文を紹介する
2021年9月にThe Journal for Nurse Practitioners誌に報告された日本の診療看護師の英語論文である。
Mukai, T., Tsutsumi, T., Takaishi, E., Hamada, O., Sasaki, S., Shimokawa, T., & Imanaka, Y. (2021). Nurse Practitioner’s Geriatric Practice in Japanese Postacute Care Setting. The Journal for Nurse Practitioners.論文リンク
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簡単に解説しようと思う。
NP関連論文:Nurse Practitioner’s Geriatric Practice in Japanese Postacute Care Setting. The Journal for Nurse Practitioners
この研究は日本の愛仁会系列の高槻病院の診療看護師でしんあいクリニックで行われた研究のようだ。
英語論文を発表した診療看護師の努力もさることながら、病院の理解やサポートも素晴らしい。
では論文の内容に触れよう。
主にabstractについて触れ、少し内容を深める。実際は論文を読んでみてください
要約翻訳
日本を拠点とするナースプラクティショナー(NP)による高齢者総合的機能評価(comprehensive geriatric assessment:CGA)と薬の調整の質を前向き観察研究で評価した。
急性期経過後に引き続き入院医療を要する状態(ポストアキュート)の患者の入院診療をするクリニックでNPが診察した64人の入院患者を対象とした。
CGA8項目の達成率は93.8%であり、近隣の病院では33.8%にとどまっていた(P < 0.05)。
また、入院した時点では【薬の量平均:薬の種類=9.2:4.7】だったのが、退院時は【薬の量平均:薬の種類=7.6:4.6】であった。統計的に有意性は無いが減少する傾向が見られた。
NPは、日本で必要とされているタスクシフティングを可能にする、老人医療に対するメリットがあることが示唆された。
ざっと翻訳するとこんな感じである。
簡単な解説
研究の中身は19床の小規模なクリニックで医師と比較した研究である。
このクリニックは急性期病院から状態を安定した人を受け入れる機能を果たしており、そのような患者の診療をNPが行うようである。
なぜCGA実施率を評価したのか?
NPのCGAの割合は医師と比較して明らかに高いようだ。特に入院直後である患者のCGAの評価の実施率が高い。
上図:論文より引用
なぜCGAをアウトカムにしたのか?
CGAとは最近注目されている高齢者評価ツールである。
分かりやすい説明スライドを載せる。こちらはホスタリスト@奈良のスライド引用である。分かりやすいブログなのでNPはブックマークをおすすめする。
総合診療流CGAプロブレムリスト 診療看護師さんへのレクチャーより引用
つまりCGAを行うことで患者の予後が良くなる可能性があるのである。これが最近注目されている理由である。
abstractは近隣の病院での実施率の比較であるが、本文は院内の総合診療医、非専門医、NPの比較である。入院直後のCGA実施率が著名に高い。退院前も高い傾向にあるだろう。
入院直後にタイムリーに患者の予後を改善するCGAを評価することは重要なNPのメリットかもしれない。
とても良い着眼点でがっつりアウトカム出る項目だ。
ただ評価するだけで終わるのは良くないので、その後のケアに繋げる必要はありそう。
ポリファーマシーも意識した内容
内服についてもポリファーマシー問題について意識し記述がある。統計的有意差はないようだが、減少する傾向にあった。少なくともNPがいることで薬が増えることはなさそうだ。
医師のタスクシフトにも触れている
NPがいることで医師の入院患者にかける時間が47分程度だったようだ。医師はもちろん外来があるので外来と入院診療を兼ねることになる。
NPいることで入院診療の時間を減らすことが示唆されている。
入院患者をNPが診察して必要な検査や治療をリハビリ、栄養もろもろを計画立案して、医師と共有することで医師は一時間足らずで患者の状態を知り、治療をすることが出来ると考えられる。
そのため医師の長時間労働を減らしている可能性があるのだ。比較などはしていないので仮説の域ではありそうだが。
安全であり、患者満足度も高い結果
また、NPが入院患者を管理する上で安全に行えたという結果であった。患者アンケートでもNPの介入は良い結果であった。
limitation:研究の限界
やはり単施設の研究である点であろう。複数施設での研究が望まれる。また観察研究であり、無作為化介入試験が理想だろう。
また、NPが実施した研究なのでホーソン効果を排除することはできないかも。
加えて患者の属性やクラスターによる評価があっても良いのかなと感じた。
まとめ
いかがだったろうか?英語論文で書くという事は世界中の人がアクセスできる。読者の人数は和文論文の比ではないだろう。
また、和文論文でも良いのだろうが、なんか英語ってカッコいいよね!
管理人もワクワクしながら読ませていただきました!
示唆に富む研究をありがとうございます。
まだまだ診療看護師の英語論文でのアウトカム評価は少ないので、この論文に続きどんどんエビデンスが出るのを期待したいところだ。
日本の診療看護師の英語論文はこちらもあります。