今回はJANPUナースプラクティショナーについて説明する。
実は日本ではナースプラクティショナーを名乗る団体が二つある。
一つ目が日本NP教育協議会(NP協議会)が認定する診療看護師(NP)である。
診療看護師については詳しくはこちらで解説している。
特定看護師と診療看護師の違い
診療看護師とは?
そして、
二つ目が日本看護系大学院協議会(通称:JANPU)が認定するJANPUナースプラクティショナーである。日本看護系大学院協議会
JANPUナースプラクティショナーの定義は明確に記載されている文書は見当たらないが、(JANPU-NP)資格認定審査要項の資料によると、
JANPUナースプラクティショナーとは、プライマリケア看護分野において、個人や家族、集団、コミュニティの様々な健康課題を解決するために、地域社会を基盤にして、自律的に、また他職種と連携・協働しながら、卓越した看護を実践する能力を有し、「日本看護系大学協議会ナースプラクティショナー(JANPU-NP)資格認定規程」第4条に掲げる役割を果たすことができるNPのようだ。
なぜ二つの組織が誕生したのか細かい経緯については
こちらを参照されたし→日本看護系大学協議会(JANPU)ナースプラクティショナー誕生の経緯とNP協議会との対立
簡単に言うとNP協議会が初めてナースプラクティショナー資格である診療看護師(NP)を作った。
NP協議会の診療看護師を見て、JANPUも必要性を感じてナースプラクティショナーを作りたかった。
NP協議会とも統一した資格化?を協議したが決裂し、JANPU独自の新たなナースプラクティショナーを作るに至ったのである。
日本では2番目のNP教育開始となった。
初めてJANPUナースプラクティショナーを養成したのは平成29年の山形大学大学院である。
2021年の現在は全国で計5校開講または開講予定である。(参考資料1)
ではこの二つのナースプラクティショナーは何が違うのかを解説する。この違いによってJANPUナースプラクティショナーとはどんな資格なのかが分かると思う。
NP協議会の診療看護師(NP)とJANPUナースプラクティショナーの違い
必須の単位数が違う
JANPUナースプラクティショナーは46単位が必須のようである。(参考資料2)
診療看護師は54単位程度である。60単位のところもある。NP協議会は30単位程度を必須にしている(参考資料3)。
これは特定行為研修の兼ね合いでどうしても単位数が多くなるからだ。
下図:厚⽣労働省⾏政推進調査事業費補助⾦ (政策科学総合研究事業(政策科学推進研究事業)) 「新しいチーム医療などにおける医療・介護従事者の適切な役割分担についての研究」 分担研究報告書(令和元年度) より引用
クリティカル領域の有無
JANPUナースプラクティショナーはプライマリケアのみ
NP協議会の診療看護師(NP)はクリティカルケア領域・プライマリケア領域の2種類存在する
認定試験が違う
NP協議会の診療看護師は毎年大学院課程を修了見込み、修了した者へNP認定試験を行う。
マークシート形式の医学的知識やNPに必要な知識を盛り込んだ試験である。
これに不合格なものは診療看護師として認められない。→詳しくはこちら NP認定試験について
JANPUナースプラクティショナーは書類審査と面接官3人による30分程度の面接試験のようだ。
下図:2021年度 日本看護系大学協議会 ナースプラクティショナー 資格認定審査(第3回)についてスライドから引用 URL
書類審査の提出書類は以下である。
※NP認定試験も同じような書類を提出する。
面接試験は15分3人の面接官の前でプレゼンするようだ。残りの15分が質疑応答の時間である。
管理人の個人的な感想であるが、事前に用意できる資料でプレゼンするタイプの面接試験は認定資、網羅的な医学知識、NPの知識などは問えないのでないだろうか?
また、15分と短い時間でNPの資格が判断できるのかは疑問である。
事例展開する以外の医学的知識は不要そう。
ぶっちゃけ診療看護師の大学院では実習中に医師の前で、複数例似たようなことするから、これが最終関門だと楽そうではある。
もちろんNP認定試験も医学知識は出るが、難易度は低い。しかし落第者は毎年数人いる試験である。
個人的にはNP認定試験+面接試験を加えたら良いのではと思う。
JANPUナースプラクティショナーの試験は面接のみ。しかもプレゼン資料を事前に用意できる。
NP認定試験よりJANPUナースプラクティショナーの試験は簡単だろう。
看護師の特定行為研修を全くしない所もある
NP協議会の大学院は特定行為研修を必ず教育カリキュラムに入れている。参考→診療看護師養成大学院の比較
NPの役割と異なるかもしれないが特定行為研修は診療報酬が付くので病院経営などの観点からも重要である。
JANPUナースプラクティショナーは特定行為研修は教育プログラムに取り入れていない所もある。(するのかもしれないが確認できず)
下図:特定行為研修修了者の診療報酬 平成30年度 厚生労働省資料 URLより引用
管理人も特定行為研修に納得している訳では無いが、国の方針にある程度沿って行く必要性は感じる。また、ナースプラクティショナー雇用する事業者も診療報酬が付くNPを取るのか?つかないNPを取るかの選択を迫られた時後者を取るとは考えにくい。
求人情報が全くない
ネットで検索してもJANPUナースプラクティショナーの求人情報はなかなかない。ほとんどが診療看護師(NP)= NP協議会のNPによるものだ。参考はこちら→診療看護師の給料
これはJANPUで行われたアンケート調査でも明らかになっている
JANPUナースプラクティショナーのまとめ
JANPUナースプラクティショナーと診療看護師の違いを詳しく述べてきた。
診療看護師である管理人なのでバイアスがあるのは間違いない。
だが、
JANPUナースプラクティショナーは医学教育が極端に少ない。逆に言えば看護教育を重視しているのかもしれない。
卒業試験でもしかすると医学知識を問う学科もあるかもしれないが、難易度や傾向は大学院によってバラバラだろう。
一定の質の担保という点では疑問が残る。
特定行為研修や医学教育がない分(医師にそこまで協力してもらう必要が無いので)、
看護系大学院はJANPU-NP教育に参入するハードルは低いと考えられる。
また、医学教育がない分、費用も割りやすとなる。(NP協議会は医師の協力も仰がないといけないので結構大変である)
これからはJANPUナースプラクティショナーの養成課程は増えるのではないかと考える。
ただ、JANPU系ナースプラクティショナーの大学院を目指している方はNP協議会の診療看護師(NP)との違いを十分認識した上で受験しよう。後悔が無いように。