「胃残量(GRV:経管栄養チューブからシリンジで吸引して確認する胃の内容物の量)が200mL引けたので、経腸栄養(EN:胃や腸に入れたチューブから栄養剤を直接投与する栄養療法)止めますね…」
集中治療室(ICU:重症な患者さんを集中的に24時間体制で治療・看護する専門病棟)の夜勤で、経腸栄養(EN)中の患者さんの胃管からシリンジで引いたら、黄色や茶色の消化液混じりの液がドバッと引けて、「えっ、これ今夜の注入止めるべき?」「引いた残渣って胃に戻すの?それとも捨てちゃうの?」って迷った経験、看護界隈なら誰でも一度はありますよね。
特に若手から中堅だと、誤嚥や人工呼吸器関連肺炎(VAP:人工呼吸器を装着して48時間以上経過した後に発症する院内肺炎)を起こさせたくなくて、ついシリンジを引く手に力が入っちゃう。わかりみが深い。だけど、数時間おきに一生懸命引いては「残渣250mL多めのため注入中止」って送って、朝の回診で医師に「え、なんで止めたの?お腹張ってた?」と聞かれて声が小さくなるのって今これ、私だけじゃないはずだ。
そもそも胃残量を毎回ルーチンで測って注入を止めることって、本当に肺炎予防になっていると思います?
引いた胃残渣を捨てるか戻すか、ベッドサイドで迷ったことありません?
これって🦐えび🦐あるの?多施設ランダム化比較試験やガイドラインを見ていきましょう!

経管栄養の胃残量は、毎回測る必要があるのか?
簡単なまとめ: 経腸栄養が安定したあと、胃残量を毎回ルーチンで測ることが肺炎予防につながる根拠は乏しい。多施設の大規模試験では、胃残量を測らない群でも人工呼吸器関連肺炎の発症率は測る群に劣っておらず、不要な栄養中断が減って目標カロリー達成率が高かった。一方で、測定をやめると嘔吐が増えやすい報告もあるため、腹部膨満や悪心などの消化器症状をあわせて観察することが大切である。
出典: Reignierら 2013、日本集中治療医学会 2024、米国静脈経腸栄養学会(ASPEN:臨床栄養管理のガイドラインを策定する米国の栄養専門学会)/米国集中治療医学会(SCCM:重症患者管理の国際的な診療指針を発行する米国の学会) 2016、Fengら 2023
胃残量を測って止めると、本当に肺炎は減るのか?
「残渣をきっちり測って溜まっていたら止めないと、胃から逆流して肺炎になっちゃう!」と信じて疑わなかった人、多いですよね。
2013年に米国医師会雑誌(JAMA:世界的に広く読まれている米国の総合医学誌)に掲載されたフランスのNUTRIREA1試験(ニュートリレア・ワン:人工呼吸管理下における早期経腸栄養時の胃残量モニタリングの要否を検証した臨床試験)は、挿管後36時間以内に経腸栄養(EN)を始めた成人患者さん449人を対象にした、多施設ランダム化比較試験(RCT:患者さんをくじ引きのように公平にグループ分けして効果を比較する質の高い研究手法)です。(1)
この試験では、患者さんを「胃残量をまったく測らない群(227人)」と、「6時間ごとに胃残量を測定する群(222人)」の2つに分けました。測る群では残渣が250mLを超えたら注入を減らしたり止めたりしましたが、測らない群では嘔吐や逆流といった目に見える症状が出たときだけ注入を調整しました。(1)
その結果、90日以内に人工呼吸器関連肺炎(VAP)を発症した割合は、測らない群で 16.7% (227人中38人)、測る群で 15.8% (222人中35人)でした。(1) 両グループの差はわずか 0.9% で、この差に対する90%信頼区間(CI:標本データから算出した推定値の統計的なばらつきの幅)は −4.8% から 6.7% でした。(1)
ここで統計の数字について少し補足すると、90%信頼区間(90% CI)というのは「真の値が90%の確率でこの範囲に入る」という意味ではありません。「同じ条件で試験を100回繰り返したとしたら、そのうち90回はこの計算された区間の中に真の差が含まれるような推計の幅」を表しています。この試験では、事前に「差の上限が10%以内なら劣っていない(非劣性)」と決めており、結果の上限が6.7%だったため、あらかじめ設定された基準のもとで非劣性が示されました(ただし著者らは、この10%という非劣性マージンは大きめと受け止められる可能性があるとも言及しています)。(1)
さらに、目標カロリーを100%投与できた患者さんの割合は測らない群の方が高く、オッズ比(OR:ある事象の起こりやすさを2つのグループの間で比較した比率)は 1.77 (90% CI 1.25–2.51、P = .008)でした。(1)
うーむ、残渣を測らなくても肺炎は増えていなかった。むしろ残渣の数字に怯えて注入を止めない分、重症患者さんに必要なエネルギーをしっかり届けられていたわけです。
だけど、話はそう単純でもありません。
この試験では、嘔吐を起こした患者さんの割合が、測らない群で 39.6% (90/227人)、測る群で 27.0% (60/222人)と、測らない群で高くなっていました(嘔吐エピソード数のオッズ比は 1.86、90% CI 1.32–2.61、P = .003)。(1)
2023年に発表された7件のRCT・1240人を統合した系統的レビューでも、胃残量を測らない群は不要な栄養中断が大幅に減る一方で(OR 0.38、95% CI 0.26–0.55)、VAPの発症(OR 0.83、95% CI 0.37–1.89)や死亡率(OR 0.90、95% CI 0.61–1.34)には有意差がありませんでした。(2)
また、2021年のコクランレビューでも、測らない群は頻回測定群に比べて嘔吐のリスク比(RR:ある事象が発生する確率が何倍になるかを比べた比率)が 1.47 (95% CI 1.13–1.93)と増加していました。(3) 肺炎(RR 0.70、95% CI 0.43–1.13)や死亡(RR 0.87、95% CI 0.62–1.23)については差がはっきりせず、エビデンスの確実性は「非常に低い」と評価されています。(3)
数字だけ見て止めるのって、もったいなくね?って話になりますよね。止めた時間のぶんだけ患者さんは栄養不足になり、かといって何も見ずに流し続けると吐いてしまうリスクがある。このリアルなジレンマを現場はどう受け止めるべきかが問われています。

ちなみに、肺炎予防策として引用される研究では、ベッドの頭部挙上(30〜45度)が肺炎発症率の低下と関連していたと報告されています(仰臥位との比較についてはまだ議論が続いています)。(6) 人工呼吸器のケアについては VAP予防バンドル で詳しく解説されています。
残渣が多かったら、経腸栄養はすぐに止めるべきなのか?
シリンジで引いて200mLくらい残渣があると、「うわ、溜まってる!即ストップ!」と焦ってクランプした経験、ありません?
実は、国際的なガイドラインを見ると、私たちが思っている以上に「残渣があっても止めるな」という方向へシフトしています。
2016年に米国集中治療医学会(SCCM)と米国静脈経腸栄養学会(ASPEN)が合同で出したガイドラインでは、驚きの推奨が示されています。(4)
まず、「ICUで経腸栄養を行っている成人患者に対して、胃残量(GRV)をルーチンのモニタリング項目として用いないことを提案する」と明記されました。(4) さらに、もし胃残量を測定している施設であっても、「他の耐容不全の徴候がない限り、胃残量が 500mL未満 で経腸栄養を中断することは避けるべきである」と勧告されています(エビデンスの質はLow)。(4)
欧州臨床栄養代謝学会(ESPEN:ヨーロッパの臨床栄養や代謝管理の基準を策定する国際学会)の2023年ガイドラインでも、経腸栄養の開始時や増量時には胃残量測定が参考になる場合があるとしつつも、安定したあとの継続的なルーチン測定は必須ではないとしています。(5) また、6時間で500mLを超えるような大量の胃残量がある場合は、経腸栄養の中止ではなく、開始や増量を遅らせたり、胃の動きを助ける消化管運動促進薬を考慮したりする基準としています。(5) さらに多量の胃残量が続く場合でも、栄養を止めてしまうのではなく、幽門後投与(腸への直接投与)を検討すべきだと述べています。(5)
そして、日本集中治療医学会(JSICM:集中治療医学の向上や重症患者管理の指針策定を担う日本の専門学会)による『日本版重症患者の栄養療法ガイドライン2024』(JCCNG:集中治療室における栄養療法の標準化を目指して策定された診療指針)でも、「胃残量計測だけで誤嚥を制御できる根拠はなく、誤嚥予防を目的としてルーチンに胃残量を測る意義は乏しい可能性がある」とまとめられました。(6) また同ガイドラインの解説(臨床疑問3-4)では、過去の日本版ガイドライン2016における「500mL未満であれば経腸栄養を中断しない」という報告や、ESPENの基準などを紹介しています。(6)
ふーむ、他の耐容不全徴候がなければ500mL未満で経腸栄養を中断しないという見解は、ASPEN/SCCMによる低品質なエビデンスに基づく弱い提案であり(4)、JCCNG 2024も他学会の基準を引用するにとどまっています(6)。現場でよく見かける「150mLや200mLで即中止」というローカルルールは、ASPEN/SCCMの提案と比べると厳しめに設定されている可能性があります。
以前、夜勤でシリンジを引いたら220mL引けて、「200超えたので中止にします!」と元気に申し送りノートに書いてドヤ顔していたら、朝の回診で主治医から「お腹張ってないし腸も動いてるのに、なんでたった200で朝まで止めちゃったの?カロリー全然足りてないよ」と言われ、声が蚊の鳴くように小さくなったことがあります。残渣(ざんさ)の数字に振り回されて患者さんの栄養を全滅(ぜんめつ)させていたら、マジで本末転倒ですよね。
シリンジで引いた残渣は、胃に戻すの?それとも捨てるの?
ここで夜勤ナースが直面する最大の疑問。「引けたこの黄色っぽい液、胃に戻すの?それとも流しに捨てちゃうの?」問題です。
ベッドサイドでシリンジを両手で握りしめたまま、「戻すべきか、捨てるべきか…」と石像のようにフリーズしたこと、ありますよね。
この疑問に対して、実は 「戻すのと捨てるの、どちらが明らかに優れているか」を示す質の高いエビデンスはありません 。(3)(6)
2021年のコクランレビューでは、引いた残渣を「戻す群」と「破棄する群」を直接比較した2件の研究(計140人)を検証していますが、嘔吐のリスク比(RR)は 1.00 (95% CI 0.06〜15.63)と差がなく、エビデンスの確実性は「非常に低い」と評価されています。(3) 日本の集中治療ガイドライン(臨床疑問3-4)でも、このコクランの比較を取り上げ、どちらか一方が明らかに有用であるという結果は見出せなかったと言及されています。(6)
なお、先ほど紹介したNUTRIREA1試験でも、測定群では250mL未満の残渣を胃に戻す手順がプロトコルとして定められていましたが、これはあくまで試験全体の管理手順の一部であって、「戻すか捨てるか」そのものの優劣を検証したわけではありません。(1)
うーむ、現場では「電解質が失われるから絶対戻せ」とか「汚いから捨てろ」とか先輩によって言われることが違って混乱しがちですが、医学的にどちらが正しいという決着はまだついていないわけです。
そのため現場での現実的な判断としては、「個人の判断で決めず、所属施設の手順書(プロトコル)と担当医の指示に従う」 のが確実な基本方針になります。(6)

ただし、手順書にかかわらず、次のような明らかな異常がある場合は戻さず破棄し、医師への報告が必要です:
- 性状が明らかに異常なとき :鮮血が混ざっている、コーヒー残渣様の真っ黒な液、便臭がする、明らかに腐敗したような色や臭いがするとき。
- 量が異常に多すぎるとき :1回で500mL以上など極端な量が引けた場合は、施設のプロトコルや医師の指示に従います。
- 病院のプロトコルで規定があるとき :「250mLまでは戻し、超過分は破棄」「全量破棄」など、施設ごとに安全基準が決まっている場合は必ずそのルールを優先します。
シリンジの前で一人で悩むより、まずは施設のマニュアルを確認し、迷ったら主治医に相談するのが安心ですね。
胃残量を測らないなら、看護師は何を観察すればいいのか?
「胃残量を測らなくていいなら、夜勤めっちゃラクじゃん!」と思った天然ナースさん、ちょっと待ってください。
胃残量を測らないということは、「何もしなくていい」という意味ではありません。先ほどのNUTRIREA1試験でも、測らない群で嘔吐が増えていたのを覚えていますよね。シリンジで引かない代わりに、私たちは患者さんの身体所見から 経腸栄養耐容不全(EFI:胃内容の排出遅延や腸閉塞などで栄養剤が消化管に受け入れられない状態) をいち早く見抜く必要があります。
具体的には、毎勤務のラウンドで次のポイントを五感を使って観察します:
- 悪心・嘔気・嘔吐・逆流 :口の中に栄養剤が逆流してきていないか、吸引時にカテーテルから栄養剤が引けてこないか、咽頭部を観察します。
- 腹部膨満と緊満感 :お腹がパンパンに張っていないか、腹壁が板のように硬くなっていないか、視診と触診で確認します。必要に応じて腹囲を測定します。
- 腹痛と圧痛 :お腹を軽く押したときに痛がらないか。挿管中や鎮静中で声が出せない患者さんでも、お腹を触った瞬間に顔をしかめたり、心拍数や血圧が急上昇したりしないか、表情と生体モニターをしっかり見ます。
- 腸蠕動音 :聴診器を当てて、腸がグルグルと動いているか確認します。音が完全に消失していたり、金属音が響いていたりしないかチェックします。
- 排便と排ガスの状況 :おならや便が出ているか。何日も排便がなくお腹が張っているなら、下流が詰まって上流が溢れそうになっているサインです。逆に、急激な水様下痢が続いていないかも見ます。

ちなみに、そもそも栄養チューブの先端が胃の中に正しく入っていなければ、すべてのアセスメントが破綻します。位置確認の方法については 胃管の位置確認 を参考にしてください。
以前、残渣の性状を凝視しようと、シリンジをナースステーションの蛍光灯にかざして真剣に透かしていたら、同僚から「何かの新薬でも開発してるの?」と真顔で突っ込まれたことがあります。シリンジの中身をどれだけ見つめても答えは出ません。見るべきはシリンジではなく、患者さんのお腹そのものです。
限界点も知っておこう
ここまでエビデンスを見てきましたが、この話を現場に落とし込む前に知っておくべき限界点があります。
第一に、紹介した大規模RCT(NUTRIREA1試験など)の対象は、主に 集中治療室(ICU)で人工呼吸器を装着し、経鼻胃管から持続的に早期経腸栄養を行っている成人患者さん です。一般病棟で広く行われている「1回300mLの栄養剤を1時間で落とす間欠的注入」の患者さんや、経皮内視鏡下胃瘻造設術(PEG:内視鏡を使ってお腹の皮膚から胃へ直接チューブを通すカテーテル手技)による胃ろうの患者さん、小児の患者さんにそのまま丸ごと当てはめられません。間欠投与の場合は、注入直前に胃が空になっているかを確認することに一定の意味がある場合もあります。
第二に、コクランレビューでも指摘されている通り、エビデンスの確実性は全体として高くありません。胃残量を測らないことで嘔吐が増加するリスクは厳然として存在します。
第三に、胃残量という測定値そのものが、患者さんの体位、カテーテルの種類や先端の位置、測定間隔などによって大きく変動する指標だということです。(6)
だからこそ、自分の病院の経腸栄養マニュアルで、胃残量の測定頻度や中止基準がどのように規定されているかを事前に確認することが絶対に欠かせません。
今後どうしていくべきなの?(手順・例外・判断基準)
明日からの勤務で、胃残量をどう扱っていけばいいのか。実践的な判断基準を整理しました。
- 施設の手順書が最優先。独断で勝手に測定をやめない :病院のマニュアルに「4時間ごとに測定」と書かれているのに、明日から勝手に測定をボイコットしてはいけません。エビデンスをもとに手順を見直すなら、医師や病棟の栄養サポートチーム(NST:医師や看護師、管理栄養士らが多職種で栄養管理を支える専門チーム)と相談してルールを更新していきましょう。
- 単一の数字だけで注入を止めない :残渣が150mLや200mL引けたからといって、即座に中止ボタンを押すのはやめましょう。お腹が張っておらず、腸蠕動音があり、嘔気もなければ、500mL未満を目安に注入を継続できるか主治医に相談します。
- 引いた液の扱いは施設のプロトコルと医師の指示に従う :引いた胃残渣を戻すべきか破棄すべきかについて、どちらが優れているかを示す質の高いエビデンスはありません。(3)(6) 血液混入や異臭などの異常がないかを確認しつつ、戻すか破棄するかは施設の手順書や主治医の指示に従って対応します。
- 数字よりも「お腹のフィジカルアセスメント」を重視する :悪心、嘔吐、腹部膨満、腹痛、腸蠕動音、排便排ガスをセットで評価します。お腹がパンパンに張っていたり強い痛みがあったりする場合は、たとえ残渣が少なくても直ちに注入を止めて医師に報告します。
- 肺炎予防は頭部挙上と口腔ケアを徹底する :誤嚥性肺炎を防ぎたいなら、残渣測定に時間をかけるよりも、注入中および注入後30〜60分のベッド角度30〜45度キープと、丁寧な口腔ケアを確実に実施しましょう。(6)

✔まとめ
✔ 経腸栄養が安定したあとのルーチン胃残量測定は、肺炎予防のエビデンスが乏しい (1)(2)(6)
✔ 胃残量を測らないと不要な栄養中断は減るが、嘔吐のリスクは高まりやすい (1)(2)(3)
✔ 他の耐容不全サインがなければ、500mL未満で経腸栄養を中断しないことがASPEN/SCCM(弱い推奨、低品質エビデンス)で提案されている (4)
✔ 引いた胃残渣を戻すか捨てるかに確実なエビデンスはなく施設手順や医師指示に従う (3)(6)
✔ シリンジの数字に頼るのではなく腹部膨満や悪心などの消化器症状をあわせて観察する
個人的には、シリンジを引く手腕(しゅわん)に命をかけるより、患者さんのお腹にそっと手を当てて「苦しくないですか?」とアセスメントできる手腕(しゅわん)を持つナースの方が、ずっと患者さんを守れるかっこいい看護師だと思います。
この記事は診療・治療の代替ではありません。実際の臨床判断は所属施設の手順書および担当医の指示に従ってください。
よくある質問
Q. 経管栄養の胃残量は、毎回測る必要があるのか?
A. 経腸栄養が安定したあと、胃残量を毎回ルーチンで測ることが肺炎予防につながる根拠は乏しい。多施設の大規模試験では、胃残量を測らない群でも人工呼吸器関連肺炎の発症率は測る群に劣っておらず、不要な栄養中断が減って目標カロリー達成率が高かった。一方で、測定をやめると嘔吐が増えやすい報告もあるため、腹部膨満や悪心などの消化器症状をあわせて観察することが大切である。
Q. シリンジで引いた胃残渣は、胃に戻すべきですか?それとも破棄すべきですか?
A. 引いた胃残渣を戻すか破棄するかについて、どちらが優れているかを示す質の高いエビデンスはありません。コクランレビューや日本版重症患者の栄養療法ガイドラインでも有用性の差は見出されておらず、施設のプロトコルや担当医の指示に従うことが基本となります。なお、血液の混入や便臭などの明らかな性状異常がある場合は破棄し、速やかに医師に報告してください。
Q. 胃残量が200mL引けたら、経腸栄養はすぐに中止すべきですか?
A. ASPEN/SCCMのガイドラインでは、腹部膨満や嘔気など他の耐容不全の症状がなければ、500mL未満で直ちに経腸栄養を中断することは避けるべきとされています。一方、ESPENでは6時間で500mLを超える場合に経腸栄養の開始や増量を遅らせ、消化管運動促進薬を考慮するとしています。200mL引けただけで即座に中止すると重症患者さんの栄養不足を招くため、身体所見を合わせて評価し、主治医と相談することが推奨されます。
夜勤の巡視中、シリンジを手にしたまま注入を止めるべきか、引けた液を戻すか破棄するかで立ち止まる瞬間は誰にでもあります。申し送りが終わったあとも、頭の中では自分の勤務時間や残業、取れなかった休憩の計算がぐるぐると回り続けていることも少なくありません。
そんな日の終わりに、ロッカーやポケットへそっと収まる「カシオ カラフル電卓 手帳タイプ」のような小物がひとつあると、張り詰めた気持ちが少し緩みます。淡いレイクブルーの丸みがある小さな電卓は時間計算機能も付いており、日々の実働時間や残業時間の整理など、自分自身のささやかな振り返りにちょうどよい相棒です。
胃残量の確認や注入の一時中断・継続の判断は、施設の手順と医師の指示に沿って行われます。手元の道具は、ご自身の勤務時間を振り返って整理するためだけのものです。今日も一日を走り切ったご自身を、優しく労わってください。

参考文献
(1) Reignier, J., Mercier, E., Le Gouge, A., Boulain, T., Desachy, A., Bellec, F., Clavel, M., Frat, J.-P., Plantefeve, G., Quenot, J.-P., Lascarrou, J.-B., & Clinical Research in Intensive Care and Sepsis (CRICS) Group. (2013). Effect of not monitoring residual gastric volume on risk of ventilator-associated pneumonia in adults receiving mechanical ventilation and early enteral feeding: A randomized controlled trial. JAMA, 309(3), 249–256. https://doi.org/10.1001/jama.2012.196377
(2) Feng, L., Chen, J., & Xu, Q. (2023). Is monitoring of gastric residual volume for critically ill patients with enteral nutrition necessary? A meta-analysis and systematic review. International Journal of Nursing Practice, 29(6), e13124. https://doi.org/10.1111/ijn.13124
(3) Yasuda, H., Kondo, N., Yamamoto, R., Asami, S., Abe, T., Tsujimoto, H., Tsujimoto, Y., & Kataoka, Y. (2021). Monitoring of gastric residual volume during enteral nutrition. Cochrane Database of Systematic Reviews, 2021(9), Article CD013335. https://doi.org/10.1002/14651858.CD013335.pub2
(4) McClave, S. A., Taylor, B. E., Martindale, R. G., Warren, M. M., Johnson, D. R., Braunschweig, C., McCarthy, M. S., Davanos, E., Rice, T. W., Cresci, G. A., Gervasio, J. M., Sacks, G. S., Roberts, P. R., Compher, C., & the Society of Critical Care Medicine and the American Society for Parenteral and Enteral Nutrition. (2016). Guidelines for the provision and assessment of nutrition support therapy in the adult critically ill patient: Society of Critical Care Medicine (SCCM) and American Society for Parenteral and Enteral Nutrition (A.S.P.E.N.). Journal of Parenteral and Enteral Nutrition, 40(2), 159–211. https://doi.org/10.1177/0148607115621863
(5) Singer, P., Blaser, A. R., Berger, M. M., Calder, P. C., Casaer, M., Hiesmayr, M., Mayer, K., Montejo-Gonzalez, J. C., Pichard, C., Preiser, J.-C., Szczeklik, W., van Zanten, A. R. H., & Bischoff, S. C. (2023). ESPEN practical and partially revised guideline: Clinical nutrition in the intensive care unit. Clinical Nutrition, 42(9), 1671–1689. https://doi.org/10.1016/j.clnu.2023.07.011
(6) 日本集中治療医学会. (2025). 日本版重症患者の栄養療法ガイドライン2024. 日本集中治療医学会雑誌, 32(Supplement 3). https://doi.org/10.3918/jsicm.32_s3



