今回も看護技術のエビデンスシリーズを始めます。
例によって某巨大看護サイトからの引用です
麻痺がある患者の麻痺側で原則として血圧測定をしてはいけません。麻痺側は、末梢の循環が悪く静脈血・組織液がうっ滞しやすい状況にあります。血管の狭窄はなくても、運動量が少なく循環血液量の低下がみられることで、健側よりも低く測定される可能性があります。引用サイト
まじか?これって🦐えび🦐あるのか探してみました!
麻痺側で血圧測定は禁忌なのか?
戦後くらいの昔の論文をさかのぼってみると確かに麻痺によって末梢血循環になんらかの影響があることが指摘されているようです(1)
脳卒中患者では血圧に差があるとされた研究
1986年の日本の研究(2)では47名の脳卒中患者(脳出血30名、脳梗塞17名)患者の血圧の左右差をしらべました。ちなみに右麻痺が20名、左麻痺27名だったようです。
結果は収縮期血圧、拡張期血圧ともに有意差ありました!!!どちらもP<0.01より未満!
麻痺側の血圧131±3/83±1
健側側の血圧129±3/78±1
・・・・ほー有意差はあるけど収縮期だと麻痺側は健側に比べ+2mmHg、拡張期血圧は+5mmHgかぁ。
確かに差はあるけど収縮期血圧変わんなくね?みなさんニカルジピンやベルジピンの流量の上げ下げは収縮期血圧でしてません??+2mmHgの違いだけで健側で測っちゃう感じ?
てか、麻痺側の方が血圧高いしなぁー、通常は高い側の血圧を採用するもんだけれどね。というか麻痺側低くならないじゃん、看◯rooさん??
ちなみにこの研究。5人に左右の橈骨動脈に23GでAラインも挿入して左右差みています!(さすがバブルな時代!今じゃこのような研究は不要な侵襲的な処置になるので倫理的にアウトかもね、、、)
その結果はどちらも有意差なしで差はありませんでした!!
結合組織や筋肉の緊張が影響しているのではないかと結論つけられています。(2)
いやいやこれはめちゃ古い研究だから当てにならんかも
麻痺側の血圧は痙性麻痺では高くなり、弛緩性麻痺では低くでる?
1992年の研究(3)で無作為に選んだ片麻痺患者103名の59‐95歳(平均77歳)の両腕の血圧を測り左右差を比べました。
平均血圧は同程度
痙攣性脳卒中の患者では、麻痺した腕で血圧が高く、弛緩した腕では患部の血圧が低かった。
血圧計を用いて間接的に血圧を測定したところ、弛緩した腕の筋緊張の低下は、72%の症例で低い値を示した。この結果は、低緊張状態の筋肉が圧縮され、カフによって上腕動脈が閉塞しやすくなるためではないか。逆に痙攣した腕を持つ患者の71%が高い値を示した。
片麻痺患者の腕の間接的な血圧測定は不正確なことが多く、おそらく筋緊張の変化の結果であることを示している。したがって、血圧の記録は常に非患側の腕で行うべきである。
ということである。
どっちかというと筋肉の状態なのか?という感じ。この論文により麻痺側は禁忌になったのかもしれないですね。
ちなみに収縮期血圧、拡張期血圧がどれくらいの差かというと5mmHgの差があったようです!!(3)
痙性麻痺と弛緩性麻痺について
痙性麻痺は筋トーヌスの亢進したもので上位運動neuronの障害が原因であり,必ず脳または脊髄の病変によるものであり,下位運動neuron障害または筋疾患ではみられない。弛緩性麻痺は筋トーヌスの減弱したもので下位運動neuron障害によることが多いが,上位運動neuronの障害時にも出現する。即ち,脳,脊髄の急激な病変による場合,初期は弛緩性麻痺を示すことが多い。この最もよい例は脳卒中による片麻痺の急性期の場合である。引用URLつまり痙性麻痺は麻痺側の腕が突っ張ってこわばった状態
弛緩性麻痺は麻痺側の腕がだらんとして脱力した状態。脳卒中初期に起こる
つまり急性期は麻痺側は血圧は低く出て、急性期過ぎて腕が固く突っ張っている人は血圧が高くでると。
めっちゃ厳しいけど、血圧はこれくらいシビアにみらなあかんのかな、、、。
だけど、、、
脳卒中の人はそもそも血管系に問題抱えている人が多いんじゃね?という視点
1993年に追試(4)が出ています。
以前の研究では同時に計測していない。最大6回くらいしか計測していない。24時間図ったのか。
カテコラミンや降圧薬の血管作動系薬、頸動脈や鎖骨下の血管の雑音がある人は考慮したん?という感じです。
これらを考慮し血管作動系薬や血管雑音がある人は除外して、日中30分毎、夜は1時間毎に24時間両腕同時血圧測定をしました。
15名、平均76歳の男女で計測しました。
左右差なしでした。
この研究では、そもそも血管系とかに問題がある人が血圧の左右でるんじゃね?という結論
ほとんどの脳卒中患者の血圧の腕間差は小さいと思われるので、血圧を測定する際に麻痺している手足とそうでない手足のどちらを選ぶかは、通常は問題にならない。脳卒中後の高血圧治療を考えている場合には、最も高い値方で測定することが重要です。(4)
と結論しています。
PADって聞いたことありますか?いわゆる末梢動脈疾患の事で手足の血管などに動脈硬化が起こり、血液の流れが悪くなり起こります。血流が悪くなった腕や足は血圧が低くなるんですね。これ系の方は四肢の血圧測定ABI検査とかしたりします。
そもそも脳卒中を起こしやすい患者さんってどんな人でしょうか?
脳の動脈が詰まったり、破れたりする病気ですよね。
そうです!そもそも血管の動脈系に異常がある人が脳卒中になっている可能性があるんですね!
という事は脳卒中が原因で血圧による麻痺で左右差がでるなら、腕までの動脈に異常が無い人で確認しないとならんわけです。
ここ最近の脳卒中の血圧左右差研究では差はない
ちなみに2013年に再度日本で片麻痺患者の左右差を測ったら差はなかったようです。麻痺側の温度差もありませんでした。SpO2もあんまり変わりませんでした。(5)
2020年の研究(6)では片麻痺のある脳卒中後の患者236人を対象とした。この研究対象者の平均年齢は62.7±13.0歳(24~86歳)を対象にした。
不整脈(心房細動など)、急性心筋梗塞、大動脈奇形、先天性心疾患、心不全、経橈骨冠動脈インターベンションの既往歴とした。
心疾患の既往や動脈に問題がありそうな人は除外している研究ですね
四肢の血圧を3回同時に計測した。
結果は両腕は左右差はなかった。(6)
いかがだったろうか?
ちなみに脳卒中患者で血圧に左右差がある場合は予後が良くないという研究もある。(7)
結論
麻痺とか関係なく血圧が高い方の腕で血圧は測る!
動脈硬化などで血流が悪くなると一般的に血圧は下がります。
なので正常な血圧は大体高い方です。最近では脳卒中による麻痺側の血圧は影響は無い。あっても臨床的にはあまり意味ありません。
あと麻痺による末梢循環系の変化は良くわからんけど血圧には影響しなさそうです
麻痺側の血圧値が高いなら麻痺側の測定を推奨します!
あと、血圧に10mmHg以上の左右差があったら、心血管系に問題がありそうで、ちょっと重症化するかもというのが最近の流行りみたいですね!
全文目を通したらカンの良い人は理解したはずです、ぶっちゃけ医学の常識はコロコロ変わるのでこれが正解とは必ずしもいえません。今後も変わるかもしれんですので、この点は注意ですね!
看◯rooさん、エビデンスに沿った看護技術書きますので是非仕事ください!ジョークです
参考文献
(1)Hoerner, E. F., Dasco, M. M., McKeown, J., & Case, H. (1954). Altered vasomotor changes (peripheral) in hemiplegias. Angiology, 5(5), 414-428.
(2)Yagi, S., Ichikawa, S., Sakamaki, T., Takayama, Y., & Murata, K. (1986). Blood pressure in the paretic arms of patients with stroke. The New England journal of medicine, 315(13), 836.
(3)Dewar, R., Sykes, D., Mulkerrin, E., Nicklason, F., Thomas, D., & Seymour, R. (1992). The effect of hemiplegia on blood pressure measurement in the elderly. Postgraduate medical journal, 68(805), 888-891.
(4)Panayiotou, B. N., Harper, G. D., Fotherby, M. D., Potter, J. F., & Castleden, C. M. (1993). Interarm blood pressure difference in acute hemiplegia. Journal of the American Geriatrics Society, 41(4), 422-423.
(5)小林淳子, & 川西千恵美. (2013). 片麻痺患者の麻痺側におけるバイタルサイン測定の可能性. JNI: The Journal of nursing investigation, 11(1), 24-30.
(6)Tao, L., Tang, M., Peng, H. P., Gu, M. B., Zhang, H. Z., Zhou, G., & Su, H. (2020). Is the blood pressure different between the paralyzed and unaffected arms or legs?. Blood pressure monitoring, 25(5), 242–245.
(7)Gaynor, E., Brewer, L., Mellon, L., Hall, P., Horgan, F., Shelley, E., Dolan, E., Hickey, A., Bennett, K., & Williams, D. J. (2017). Interarm blood pressure difference in a post-stroke population. Journal of the American Society of Hypertension : JASH, 11(9), 565–572.e5.